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トッピクス - 旅に出よう - 海外(その3)

 

 

 

・冷房地獄

 

 

■ 冷房地獄 ■

 チェンマイは、バンコクの北約700キロのところに位置するタイ北部の最大の都市である。バンコクからの移動手段としては、飛行機、列車、そしてバスの3通りがある。飛行機は、もうその料金の方は覚えていないのだが、バックパッカーとしては最初から選択肢になかった。そして、残りのバスと列車だが、おそらく「最もお金をかけずに行く」ということであれば、列車の「3等、エアコンなし」だったように記憶している。

 そして、列車もバスも、エアコン付きの座席の料金がほぼ同じくらいで、所要時間がバスの方が2、3時間短かったので夜行バスを利用した。地球の歩き方には「バスでは冷房をギンギンにかけるので、身体を冷やさない対策が必要」と注意事項として記されている。

 また、北部にあるチェンマイなどは夜になると冷えるとも書いてあるので、日本を出発する時には、バックパックの中には長袖のシャツと薄手のセーターは詰め込んでおいた。ただ、それだけでは不安だったので、バンコクで安いウィンドブレーカーを購入した次第である。

 バスがバンコクのバスターミナルを出発したのは、夜の9時前後だったと記憶している。バスに乗り込んだ時点で、けっこう冷房が効いていた。私の座席は、最前列のドライバーのすぐ後ろの窓際で、隣の通路側には年配の僧侶の人が腰を下ろした。この辺の地域の仏教独特の黄衣をまとっていたが、それだけではさすがに寒かったのであろう、上はジャンパーを羽織っていた。

 さて、私の服装だが、特に寒いのは苦手で、まず靴下を2枚履いた。さすがに、ズボンは2枚重ねて身につけることはできないので、動きやすいようにジーパンではなく伸縮性のあるズボンを履いた。そして上半身だが、T-シャツを2枚、長袖のシャツを1枚、薄手のセーターをその上に、そして買ったばかりのウィンドブレーカーをアウターとして着用した。

 バスはほぼ予定通りに、バンコクのバスターミナルを出発した。市街地を抜けて交通量も少なくなると、バスのスピードも少しずつ上がっていった。それに伴って、エアコンのコンプレッサー音も大きくなり、車内の温度が下がっていくのが分かった。

 最初は「これだけ着れば十分だろう」と思っていたが、出発してから1時間もすると「寒い」と感じるようになり、少し身体を丸めて表面積を小さくしなければならないほどであった。

 チェンマイまではおよそ10時間ほどかかるが、もちろんノンストップで走るわけではなく、途中で休憩が何回かあった。日本のドライブインほど立派なものではなかったが、トイレや食べ物を提供しているところで10分から15分程度停車した。しかし、バスの外に出ると、そのギャップが何とも言えなかった。冷蔵庫から一気に暖房の効いている部屋に入るようなもので、「うわっ、蒸し暑ち〜」と慌ててウィンドブレーカーとセーターを脱がなければならなかった。

 もちろん、そのような「冷房ギンギン」の状況で熟睡などできるわけはなかった。ウトウトしたかと思うと、身体が寒さでブルブルっと震えて目が覚めてしまった。それを何回か繰り返すと、暖房の効いている部屋が待っているという状況であった。それでもすっかり明るくなりきった頃には、事故を起こすことなく、バスはチェンマイのバスターミナルに到着し、やっと冷房地獄から解放された次第である。

 

備考