「それじゃあ前半と後半を1回通しますね。さあ、前半から行きましょう!」というインストラクターの
言葉とともに、右足をステップ台の上に乗せ、次に左足を乗せた。そして右足を台に向こうのフロアに下ろした。ここまでは全く問題ないわけである。しかし、次がどうしても出てこないので、斜め前の女性の動きをチラチラと見ながら「あれ〜、そうだったっけ?」と思いながらもワンテンポ遅れるようにして何とか前半を終えた。そして、後半に入ったのだが、後半は特に問題はなかった。
次に反対の足からの前半、後半である。ここでもやはり前半の部分は、分かるのは最初のステップ台の上に乗ってから足を前のフロアに下ろす部分だけである。あとは斜め前の女性の動きを見ながら何とか終えた次第である。
こんなことを2、3回繰り返した。一般の人、いわゆる「凡人」と呼ばれる人たちであれば、最初は「あれっ、何だっけ?」となっても、さすがに2、3回も繰り返せば、「あ〜、そうだった!」と思いだすわけである。それに対して、私の場合は、幸か不幸か、特殊な才能を生まれながらにして備えているので凡人とは違う。最終的に5、6回繰り返したが、全く思い出すことはなかった。
ここまで見事に思い出せないと、これはもう「悔しい!」などという小さな感情ははるかに超越し、「もう笑っちゃうしかない」わけである。ある意味、ちょっとした幸福感というのを感じるくらいだ。おそらく、神経伝達物質のドーパミンや脳下垂体から幸福感をもたらすオキシトシンというホルモンが盛んに分泌されているに違いない。一種の「自己防衛」である。
しかし、最初に前半だけを行ったときは「今日は完璧だ!」という思いはどこへ行ってしまったのだろうという気がしないでもないが、あまり深く考えても仕方がない。それが凡人でない星の元に生まれてきた人間の運命なのかもしれない。
かねがね「自分は大器晩成型に違いない」と思っていたが、「晩成っていつだろう?」という疑問はあった。しかし、今回のことで「やっときたのか!」という実感し、「将来が楽しみだ!」と思っている今日この頃である。やれやれ…。