日記 - 5月

 

5月14日(水) 「葬儀準備(その1)」

 

 死亡が確認されたのは「5月13日(火)午後0時30分」である。今年の初めには、「今年、一杯もてばよいかもしれない」と思い、それが春には「夏までは難しいのかもしれない」となり、先週末には「もう1、2週間ほどだろうな…」となっていった。

 先週の半ばあたりから、食事とトイレで起きる時以外は寝ている状態であった。1日23時間以上は寝ていたような気がする。食べる量もかなり落ちたが、点滴などに頼ることもなくカステラやイチゴなどの果物を自ら食べていた。そして、日曜日の深夜に少し口にしてから全く飲み食いすることなくずっと寝ている状態が続いた。それも、寝ているというよりは、いわゆる「昏睡状態」みたいな感じであった。

 素人目にも、さすがに「もう長くないな」と感じざるを得なかった。月曜日に、いつものように訪問してくれた看護師さんからは「飲み食いできなければもって1週間くらいでしょう。でも、○○さんは心臓が弱っているので、そこまでは持たないかもしれない」と言われた。呼吸の状態を見ても、「あれっ、止まってしまったのか」と思われるような状態もたびたびあり、このまま目を覚ますことなく死を迎えるものかとばかり思っていたのだが、それが昨日の朝方「お〜い、お〜い」と呼び始めたのである。

 慌ててベッドに行って見ると、目を開き、片腕を少し持ち上げている。「何?」と聞いても、何か言いたいのだろうが、もう意思表示ができない。ただ、今までは、だいたいこういう場合は「トイレ」だったので、車いすに乗せてトイレに連れていくが、さすがにもう自力で立つことは全くできなくなっている。

 身体を抱えて何とか立たせ、パンツを下ろして便座に座らせると、「う〜う〜」言いながら何とか少しではあるが絞り出すように排尿をした。再びベッドに連れて行き少し水分を与えてみた。のどが渇いていたのか、とくに拒否することもなくわずかではあるが口に含んでくれたのだが、口をモグモグしてもうなかなか呑み込めないような状態であった。

 しばらく様子を見て落ち着いたのを確認し、ベッドのリクライニングを倒して横にさせると、すぐに眠りに入ってしまった。私も、寝不足もあり少し寝床に横になってしまったのだが、起きたときには息をしていなかった。すぐに、かかりつけの医師に着ていただき、死亡を確認してもらった次第である。時刻は正午を30分ほど回っていた。