杭打ちを管理した設計士(architect)は「データを紛失した」とか「データを取らなかった」と言い訳をしているが、それと杭が支持層に達していなかったこととは全く関係がないわけである。要するに、杭を打った時点で支持層に達していないことを認識していたことは明らかだ。まあ、それが大元の建設会社である旭化成建材や販売会社の三井不動産レジデンシャルに伝わっていたかどうかは定かではないが…。
また、昨日あたりは、ネットに日本でのマンション販売である「青田売り」が今回の騒動の根底にあることを指摘した記事を目にした。欧米でのマンションの販売は、構造物がほぼ完成しかけた時点で販売するのに比べて、日本の場合は、建設に着工する前に、または着工すると同時にまずモデルルームを作って販売する「青田売り」がほとんどであるようだ。
当然、売り出す時点では販売価格が決まっているわけだが、販売をしてから完成するまでにある程度の期間があり、その間に建築資材の高騰などが十分に考えられる。建築資材が上がれば、その分だけ利益は減ってしまうことになる。
また、工期(construction period)が伸びれば、その分、人件費(labor costs)が増えていくのでこれも利益を圧迫する原因となる。よって、工期は「厳守」となり、それがあまりにも厳格すぎると「まともにやっていたらとても間に合わないので、ちょっと手を抜くか!」という発想が生まれるというわけである。日本の場合は、少し規模の大きな建設となると、工事をそのまま「下請けの下請け」に丸投げする「孫請け」なるシステムも常態化しているようなので、丸投げされて利益率が減ってしまう工事であればなおさらなのかもしれない。つまり、今回の件だが「一設計士が行ったこと」というよりは構造的な問題があることになる。
さて、今回の事件だが、建設会社の旭化成建材は莫大なる損害を被ったわけなのだから、通常であれば杭打ちを管理した設計士を告訴するものと思われるが、現時点ではそのようなことは漏れ聞こえてこない。「もし、告訴しなければ、できない理由があるのだろうか?」などと少し勘ぐってしまうわけである。さてさて、どうなることやら…。