彼はウエイトを50`にしてベンチを行い始めた。まあ、その準備段階からしてそうだったように、まだまだやり慣れた感じではもちろんなかった。それでも、50`に関しては「危なっかしくて見ていられない」という感じはそれほどしなかった。
次に10`増やして60にしたのだが、さすがに50`のようなわけにはいかず、最初から胸の上でバウンスをさせて持ち上げ、そのやり方で3、4回行うと、それも辛くなったのかバーを途中までしか下ろさなくなった。
見ている私も「大丈夫かな?」と少し心配になってきた。それでも1セットは何とか終えたようである。まあ、補助器具をセットしているので、仮に(if)持ち上げられなくても補助器具がバーを受け止めてくれるので特に問題はないわけである。
さて、2セット目である。1セット目と同じように行っていたのだが、結局、途中で持ち上げられなくなってしまった。そういう時はそのままバーを落として素直に補助器具にゆだねればよいだけだ。後は、身体を滑らせるようにしてベンチを下り、ウエイトを少し軽くしてデッドリフトのようにしてバーを持ち上げてもともと備え付けてあるフックに掛ければよい。
しかし、まだまだやり慣れていない彼は、持ち上げられなくなったところからバーを頭の方に水平移動(horizontal displacement)させてフックに掛けようとしている。それって、とても危険な行為(dangerous action)なわけである。
「大丈夫かな?」と見ていると、フックに掛ける手前で力尽きてしまった。それは何を言いするかと言うと、バーを自分の首のところに落とすことになる。持ち上げられなくなった時点で、素直にバーを補助器具に委ねればバーは胸のあたりで止まってくれることになるのだが、無理に頭の方に移動させてしまったので、そこから落としてしまうと補助器具から外れてしまいバーは首のところに落ちてもがき苦しむことになる。私はすかさずヘルプに入った。