いきなり訳も分からないところから「柿の農園のオーナーになりませんか?」とダイレクトメールが来ても全く見向きもされないに違いない。ただ、今まで干し柿を購入したことがあり、製品に対して「値段はするけど美味しいわ」などとよい印象を抱いているのであれば、「銀行に預けていても利子なんか付かないのも同然なので、5万円くらいだったら…。」という感じで始める人が出てきてもおかしくはない。
そして、最初は少額でスタートしても、配当金 (dividend) を含めた投資資金 (investment funds) がしっかりと戻ってくれば「よ〜し、この際だからもっとつぎ込むかっ!」となっても何ら不思議はない。
ただ、そのビジネスモデルは長くは続かなかった。結局は(株)ケフィア事業振興会とかぶちゃん農園を含む関連会社3社が、負債総額1,053億3,706万円を抱えて東京地裁から破産開始決定を受けることとなった。4社の債権者数は「3万3,747人」とのことである。東京商工リサーチのサイトには以下のような解説が見受けられる。
「 ケフィアの破産申立書によると、2018年6月末時点の資産簿価は484億448万円。現預金は5,477万円しかなかった。「柿」などの商品在庫額も3,252万円にすぎない。
残りの資産は、かぶちゃん農園(株)(TSR企業コード:296009326、長野県)などグループ向け売掛金(約26億円)、貸付金(約248億円)のほか、「商標権」が約19億円。「顧客情報」も資産として約47億円を計上していた。
こうした資産の大半は回収が困難とみられる。だが、ケフィアはホームページに決算書の要旨しか掲載せず、会員を安心させていた。」
つまり、現在投資している人の多くは「泣き寝入り」ということになる。ただ、ここにきて、大元の(株)ケフィア事業振興会から「かぶちゃん農園」を分離し、干し柿販売の事業の継続を図る動きも見られるようだ。
仮にそれが可能だとしても、投資で失敗した人は二度と商品を購入することはないだろうし、投資をしなかった人でも当然のことながら再購入はためらうはずである。よって、いずれは消滅する (disappear) ことになるに違いない。
これは私の想像に過ぎないのだが、「今回の騒動で被害を被った人の多くは年配の人なのでは?」と思っている。つまり、人生経験が豊富で世の中の良い所も悪い所も見て来た人たちとなる。常識的に考えれば、銀行の預金の金利は「ほぼゼロ」となっている時代に、年率5%から10%というのは「ちょっと怪しいのでは…」となるところである。
「上手い話には裏がある」と昔から言われてきたが、「干し柿という庶民的な食べ物でその辺の感覚が鈍ってしまったのだろうか?」という気がしないでもない。個人的には「手を出さなくてよかった!」とも思ったが、よくよく考えてみると、そもそもそのような投資に回す余計なお金など私にはなかったわけである。う〜む、喜んでよいやら悲しんでよいやら…。