四方山話
     

      

台湾フィットネス紀行/四方山話




最後に

 しかし、見事である。何が見事かというと、天気。台北市に13日間滞在して1日たりとも青空を見ることはなかった。到着した日以外は毎日のように雨が降ったのである。幸いなことに激しく降ることはほとんどなく、傘を持ち歩くこともあったが、使ったのはほんの1、2回程度。それでも滞在中毎日だと少し気が滅入ってくる。
タイ、マレーシア、韓国では雨が降ったのはタイの1日だけだったような気がする。1日と言っても、乾季のタイには珍しく1時間ほどの激しいスコールだった。

 そもそも台湾をこの時期に選んだのは、他の国もそうなのだが、それなりに気候を考慮に入れて決めたつもりである。
観光目的ではなかったのであっちこっちに出歩くつもりははじめからなかったが、それでも雨が多いとフィットネスクラブに行くにも苦労をするだろうから、訪問する月の降水量は特に気にとめていた。
台湾(台北市)の場合は、夏場は台風の影響もあってか降水量が多いが、10月に入るとその量は極端に落ち9月の半分となる。もちろん11月、12月はさらに少なくなるが、あまり気温が下がっても行動しにくくなるような気がしたので「10月がベスト!」と決めたのだが、自分が予想していた天気とは程遠いものであった。
今年が特別だったのか、それともその月の「降水量」という数字だけを漠然と見ていたので、10月は9月に比べたら降水量はぐっと落ちても今回のように毎日が「小雨交じりの曇天」というのが典型的な10月の天気なのかは定かではないが…。
ただ、天気以外はスムーズにことが運んだような気がする。宿の方は捜すのにはえらく苦労したが、それ以外は「当たり」であった。
本文と重複するが、広く清潔だったし、近くにはコンビニをはじめとして朝市や庶民的な食堂なども多く、どれも美味で「食」に困ることはなかった。
そして、立地条件が良く地下鉄の駅からも近くだったので、行動するにはとても便利なところであった。
反対に、タイ、マレーシア、韓国といずれの国においても、最初に宿泊した宿は全て変更している。最初からその予定であれば別だが、現地で宿を変更するということは、もちろん荷物をまとめて移動させたりしなければならないのも厄介だが、それ以前に新たに宿を探さなければならないとい問題が出てくる。限られた予算の中で「より良い宿」をガイドブックやインターネットを使って探さなければならないので、これがかなりのエネルギーを費やすものである。
台北でも3、4日も滞在するとだいたい自分の行動パターンが決まってくる。6時から7時には宿を出てアレキサンダー・ヘルスクラブに向かう。そして、気持ちよく汗をかいた後にプールに行ってジャグジーにつかってからロッカールームに向かうのである。
その後は、クラブが入っている「Neo19」のビルから歩いて2分ほどのところにある「串焼きバー」で軽くのどを潤すが、この汗をかいた後の生ビールが最高なのである。軽く食べるものも注文するが、本格的な夕食は宿に帰ってからである。
「本格的な夕食」と言っても、12時近くになっているので大衆食堂は閉店しているから、コンビニで済ませることが多い。
自分の部屋ではビールを片手にお弁当やおにぎりをパクつきながら、「何かいい映画がやっているかな?」と視線は壁に埋まっている液晶テレビの方を向けているのがほとんどなのだが、次のようなコマーシャルを何度となく目にし、印象に残っている。

 10歳前後の女の子とその30歳半ばくらいの父親がテーブルに向かい合って座っている。女の子が手元にあるノートにペンで何かを書くとそれを目の前にいる父親に渡すのだが、父親は「そんなのとんでもない!」という感じで首を横に大きく振り、女の子が書いた文字に大きく×を書き、再びそのノートを女の子に渡すのである。
その女の子は「じゃ、これだったら」という感じで別の文字を書いたかと思うと、再び父親に渡しているが、今度もその父親は「まだまだ」という風に再びその女の子が書いた文字に×を書き、少女に渡す。
3、4回同じようなことを繰り返し、最後に少女は「もう、仕方がないな、これが最後よ!」と力を込めて文字を書くと目の前の父親にノートを渡す。
その文字を見た彼女の父親は「よし、これで決めよう!」という感じで大きくうなずき彼女が書いた文字に大きな丸を書くのである。
すると今までは何を書いているのかは画面上からは分からなかったが、ノートの文字がズームアップされた。
そこには「Full Marathon 42.195km、Marathon 30km, Half Marathon 21.1km」の文字に×が書かれ、最後の「City Marathon 10km」に大きな丸が書かれているのである。
また、地下鉄などのホームには、全てではないが液晶テレビがところどころに設置されていて、その四隅にはあと何分で電車が到着するのかなどの運行状況を表示したりしているのだが、中央のメインの画面には、一般企業のコマーシャルもなくはなかったと思うが(記憶があいまい)、公共的なコマーシャルが多く、印象に残っているのに次のようなものがあった。
プールで泳いだり、屋内の壁をフリークライミングしたり、スポーツクラブでマシンでのトレーニングやエアロビクスなどをやっている場面が流れているのだが、やはり一般企業のコマーシャルというよりは公共広告のようであった。
映像と一緒に流れている漢字の字幕から判断すると、どうも「雨の日も室内で積極的に体を動かしましょう。」という趣旨の広告だったような気がするのである。
これらのことから考えると、台湾も「国を挙げて健康促進の運動をしている」などというとちょっと大げさかもしれないが、それでも「なるべく体を動かして健康的に生活しよう」というメッセージを国民に送っているような気がする。
健康であるということは、その人の生活の質も向上するし、医療費を抑制することもでき一石二鳥である。本人のちょっとした意識の持ちようでより「健康」に近づけることはできるものである。
人類が誕生して以来、何百万年とかけて体を使ってきたので、現在のような体形になっているはずである。ここでその歩みを止めてはいけないと私は声を大にして言いたい。
さて、今回も現地のフィットネスクラブで気持ちよく汗をかくことができ、体調を崩すこともなく無事に帰国できたので何よりである。もうしばらくは海外に行くことはできないだろう。でも、きっとまたいつか…。



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