前日の25日に突然の胃の差し込むような痛み、下痢、そして嘔吐に襲われ、我慢しきれずに宿のスタッフに病院に連れて行ってもらったわけだが、下痢止めの注射によって下痢の方はかなり治まったし、嘔吐も、まあ、病院にいくときにはかなり治まっていたのだが、もらった薬の服用も功を奏したのか、病院から戻ってきてからは一度も吐き気を催すことはなかった。
翌朝、部屋の電話が鳴り「何だろう?」と思って出てみると、病院に連れて行ってくれたスタッフからであった。
スタッフ : 「体調はどうですか?」
私 : 「かなり回復しました。」
スタッフ : 「それはよかった。それで朝食ができていますが?」
私 : 「いや〜、とても食べたいとは思わないけど…。」
スタッフ : 「食べやすいお粥を作ってあるので、ちょっとは食べた方がいいですよ。」
私 : 「ん〜、分かりました。じゃあ、今から下りていきます。」
正直、あまり朝食を取りたいとは思わなかったのだが、「食べやすいお粥を作ってあるので…」と言われ、スタッフの親切心を無下にするのも少し心苦しかったし、「少し食べておいた方が回復も早いか」となった次第である。
まだまだダルく感じる身体を「しんどいな〜」と思いながら1階まで階段を下り、スタッフとあいさつを交わすと「このテーブルをどうぞ!」と壁側にある4人掛けのテーブルにつくように促された。そして、私が椅子に座るとすぐに、「はい、お粥です!」とラーメンのどんぶりよりは一回りほど小さなどんぶりが目の前に置かれた。
私は「いただきます」と言って、脇に置かれたスプーンで一口食べたが、これがなかなか食べやすかった。けっこう量はあったが、気が付くと完食していた。それを見て、スタッフがいつものようにコーヒーをテーブルまで運んでくれた。
私は「このまま体調がよくなってくれればよいが…」と思いながらそのコーヒーを飲んでいると、この日は、朝食を食べている人の中に日本人の男性がいて声をかけられた。どうも宿のスタッフが、その日本人に「あの人も日本人だが体調がよくないんだ」と声をかけてくれたみたいである。
年齢は23歳から24歳くらいの青年で、小奇麗な格好をしていて、一見して「旅行者という感じではないな〜」という印象を持った。
青年 : 「体調の方は大丈夫ですか?」
私 : 「ええ、下痢や嘔吐でかなり苦しい思いをしましたが、かなり落ち着いてはいます。」
青年 : 「何が原因だったのですか?」
私 : 「いや〜、医者からは水や食べ物、そして気候が原因だろうとは言われたのですが…。」
青年 : 「そうですか…。」
私 : 「あなたはどうですか?こちらに来て下痢などはないですか?」
青年 : 「いや、特に…。」
私 : 「そうですか?ところでミャンマーにはどれくらいいるのですか?」
青年 : 「こっちには1年8ヶ月前に来て、現在、NPOで働いているんです。」
私 : 「NPO? それで、どんな活動をしているんですか?」
青年 : 「はい。主に図書館などに本を寄贈しています。」
私 : 「本を?その本はどうやって集めるのですか?」
青年 : 「本は日本で集めて、それにビルマ語のテキストをつけています。」
日本で「ミャンマーの貧しい子供たちに本を贈りたいので…」と声をかければそこそこ集まってくるとは思われるが、「それをビルマ語にするのは大変な作業に違いない。」と思っていると、図書館に寄贈している本は主に絵本だということなので納得したわけである。
私 : 「それで、いつまでこっちにいるのですか?」
青年 : 「それが、この5月までなんですよ。」
私 : 「そうですか?えっ、その後は?」
青年 : 「次はケニアのNPOで働くことになっています。」
私 : 「そうですか?今度はアフリカですか?それで、その後は?」
青年 : 「はい。できれば日本で大学院の方に行きたいと思っています。」
どこの大学を卒業したのかなどは聞かなかったが、なかなか利発そうな顔をしていた。「若いうちにしか出来ないのでやりたいことをやるといい!」とおじさんとしてはアドバイスをした次第である。「青年よ、大志を抱け!」である。
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