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■ 石垣島へ ■

 沖縄の次は、再びフェリーを利用して石垣島に移動している。恐らく半日ほどかかっているのではないかと思う。下船をして、まずユースホステルを目指した。「TREK石垣島ユースホステル」である。

 チェックインには早かったが、とりあえず荷物だけ預かってもらい、最北端である平久保崎を目指した。沖縄本島ではあまり気にしていなかったのだが、ここ石垣島では街路樹にハイビスカスなどがさりげなく植えられたり、道路沿いにはパイナップルの畑があったりと「いや〜、南国にやって来たのだな〜!」と思わずにはいられなかった。

 石垣島最北端の平久保崎には灯台があるくらいで、特に観光名所として名が知れたところと言うものでもなかったが、距離的には片道23キロ弱であったので「とりあえず端まで行ってみたい」という思いがあった。

 その平久保崎から帰ってくると、ユースホステルの目の前には海が広がっていてシュノーケリングのポイントにもなっているので、とりあえず「どんな感じだろう?」と足ひれ、シュノーケル、そしてゴーグルをつけて入ってみた。

 海底の砂は白く、そこそこ遠浅となっていてる浜であったが、サンゴはそのほとんどが崩れていて、魚影も多くなくポイントとしては今一つであったように記憶している。

 現在もまだユースホステルの方は存在しているようであるが、サイトには「当分の間休館」の文字が…。

 

 

■ 今でもはっきりと覚えている ■

 平久保崎からの帰路での出来事だが、のんびりと両側にハイビスカスが植えられた道を走っていると1羽の鳥がハイビスカスの影から道路に出てきた。大きさは、ウズラを一回り大きくしたような感じで、形もそれに似て少し寸胴の鳥であった。

 よくよく見ると、小さなヒナを4、5匹連れているのである。私は自転車を道路脇に停め、自転車から降りて腰をかがめてしばらく見学していた。小さなヒナ達は、「ピーピー」鳴きながら親鳥の後をちょこちょことまだおぼつかない足取りで追いかけていたのである。

 しばらく見学していると、300mほど離れたところに車の存在に気が付いた。立ちあがってそちらの方を見てみると、大きな4輪駆動車のランドクルーザーであった。

 「この鳥たち、大丈夫かな?」との不安はあったが、大きな車なので近付いてくれば鳥たちはびっくりして出てきたハイビスカス隠れてしまうものと思っていた。しかし、結果は全く反対であった。車が私の横を通り過ぎようとした時、鳥たちは道路の中央の方に移動していったのである。

 「あっ!」と思って車が通り過ぎた方に目をやると、ヒナが2匹、親鳥を求めて「ピーピー」と鳴いているだけであった。その2匹以外は趾形もなくなっていた。わずかに親鳥のものと思われる羽根が何枚か車が通り過ぎた後に起きる風によって道の上を移動していただけであった。

 「しまった!」と思った。「なぜ車に鳥たちの存在を知らせてあげられなかったのだろう」と後悔した。車が私の横を通り過ぎる時、何気なくだがドライバーの顔が確認できた。30代半ばくらいだと思われる男性が運転をしていて、助手席には女性が座っていた。そして、後部座席には、恐らく小学校の低学年くらいであろう思われる2人の女の子が、少し身を前部座席の方に乗り出すようにして楽しそうに会話をしているのが目に入ってきたのである。

 もちろん、運転手は私の存在には気が付いていたであろうが、鳥たちの存在は全く分からなかったに違いない。

「それを知らせるのが私の役目ではなかったのか?!」と思わざるを得なかった。飛ばされた鳥たちが生きているとは当然思えなかった。残った2匹だって、これから無事に成長していくかなど全く分からない。私が地元の人間であれば「オレが育ててやる!」と自宅に持ち帰って飼うこともできるかもしれないが、もちろんそのような状況にはない。「ごめんね!」とヒナたちをしばらく眺めていると、「ピーピー」ともと来たハイビスカスの中に入って行った。私は、後ろ髪を引かれる思いでその場を立ち去らなければならなかった。

 でも、つくづく思った。私たち人間の営みは、もしかしたら何気ないこういう動物たちの犠牲の上で成り立っているのかもしれないと…。

 

備考