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食事の時間は、宿泊中の楽しみの一つでもある。もちろん、ホテルなどの食事ほどの贅沢さはないが、それでも夕食の時間が近づくと「今日は何だろう?」とちょっと気になったりする。
夕食の時間は、おそらく17時半から18時くらいだったように記憶している。ここ、いるもて荘には食堂があり、その時間帯でおのおの夕食を済ませることになる。日によっては、「これ、〜さんが取ってきたタコよ!」とタコ刺などのおかずが一品増えたりする。
食堂にはテレビがあって、食事中はつけっぱなしになっていたが、当時はNHKしか電波が受信できなかった。よって、ブラウン管に映し出される番組はNHKの総合ということになる。時間的にも「ゴールデンタイム」という時間ではなかったので、ニュースあたりが流れていたように記憶している。食事中は、特に会話で盛り上がるということもなく、どちらかという、ときどきテレビの画面を見ては黙々と箸を進めるような感じだった。
私の記憶違いでなければ、(今はどうなっているのか分からないが)まだ当時のユースホステルでの飲酒は禁止されていた。よって、非常に残念ではあったが、夕食と一緒にビールなどを飲むことはなかった。
夕食後は、おのおの好きな形で時間を過ごすこととなるが、いるもて荘の回りには自然しかないので、「ちょっとコンビニに」などということはできない。港まで下れば、お店は数件あったはずだが、暗い道を20分ほど歩かなければならないので、その様なことをする人は皆無に等しかったと思う。
よって、夕食後は、そのまま食堂に残ってテレビを見たり、自分の部屋に戻って読書をしたりと、各自が思い思いのことをした。私の場合だが、夕食後の過ごし方は雨でない限り決まっていた。
いるもて荘は鉄筋コンクリートの2階建ての建物で、屋上に上がることができた。私の食後の楽しみは、屋上に上がって夜の帳が下りるのを味わうことであった。
夕食を終え、屋上に上がる時間帯は、だいたい水平線に陽が差しかかる少し手前で、まだ辺りは明るかった。「夕食、美味しかった〜」などと、しばらく屋上に寝転がって休んでいると、陽は水平線の向こうに沈み始める。残念ながらいるもて荘からでは山々が邪魔をして直接陽が沈むところを見ることはできないが、陽が沈む方向の水平線がうっすらとオレンジ色に染まるので、そのおこぼれくらいは楽しむことができた。
陽が完全に沈み切ってしまうと少しずつ闇夜に包まれるわけだが、どこからともなく何かが羽ばたく音が聞こえてくる。目を凝らして音の方向を見ると、大きな鳥のようなものが飛んでいるのだが、その飛び方は鳥のものではなかった。「八重山大コウモリ」である。夜の帳が下りると同時に「自分たちの出番」とばかりに元気に羽ばたき始める。しかし、数分もすると羽ばたく音は聞こえなくなってしまう。きっと彼らも、ディナータイムを楽しんでいるのだと思う。
そうなると、今度は「天体ショー」の始まりとなり、南国の夜空の星星が満開となる。 屋上で仰向けになり、見上げる分にはもちろん遮るものは何もない。また、起き上がって水平線あたりに目をやると、遠くの島の家屋から漏れてくる光が邪魔をしたりするが、その様な場合、手の平を使って遮ってやると、より一層水平線近くの星星の輝きが増す。高級ホテルなどでは味わえないものがここにはあるような気がする。
備考 |
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