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「ヨナラ水道」とは、西表島と小浜島の間にある海峡のことで、幅は500〜780m、水深が10〜30m、そして長さは約5kmほどある。スキューバダイビングをする人であれば1回くらいはその名前を聞いたことがあるはずである。仲之御神島と並んで「一度は行ってみたい!」とダイバーが憧れるポイントの一つである。
ダイバーの間では「マンタェイ」と呼ばれ、マンタが回遊するところとして知られている。ダイビングに興味がない人でも「マンタ」という言葉は一度くらいは耳にしている人も多いのではないかと思うが、マンタとはオニイトマキエイのことで、大きいものでは身体の横幅が8m、体重が3tに達するものもある。
ダイバーであればだれでも「大きな魚を見てみたい!」と思うのは本音でが、私みたいな小心者は「あまり大きいと何か危害を加えられるのでは…」などと思ってしまうが、マンタはプランクトンを食べているおとなしい魚なので、その心配はない。
ポイントに着くと、船長兼ガイドのお父さんが、「おい、おい、そこにいるのマンタじゃないか?!」と言うではないか。船に乗っていたツアーのメンバーは、みんな一斉に「えっ、どれどれ」と船から身体を乗り出して海の中を覗いたが分からなかった。お父さんがいた操縦席は、私たちの頭と同じくらいの高さにあるので確認ができたのかもしれない。
しかし、大型の回遊魚となると、どこのポイントでもそうだが、「見れる・見れない」はその日の運によるところが大きい。中には「5回行ったけどダメだった」と言う運に恵まれない人だっている。なので、「そう簡単に見れるものではない」くらいの覚悟はできていた。それを、ポイントに着くなり、いきなり「マンタじゃないか」とか言われてしまうと、「うっそー」と半信半疑なのが正直なところであった。
「早く準備して!」の声に、ツアーのメンバーは期待に胸を膨らませながら準備にとりかかった。仲之御神島の時と違って、ほとんど船も揺れてはいなかった。
私も、急いで必要なものを身に付け、最期にフィンを履いて船の縁に海側に背を向くようにして腰を掛けた。着水したときに、タンクからホースによってつながれているメーターや予備のレギュレーターが暴れないように片腕でしっかりと押さえ、もう一方の手でマスクがずれないように抑えて、背中に背負ったタンクから着水した。
空の青さが一瞬見えたかと思うと、「ジャブーン」という多少の衝撃とともに目の前は小さな気泡で包まれた。
通常は、最初からレギュレーターを口にくわえることはない。少しでもタンク内の空気を節約するために、最初はシュノーケルを使用する。ただ、着水時にはシュノーケル内に海水が入ってしまうので、まずはそれを「シュッ」と吐き出さなければならない。
履いているフィンでゆっくりと海中をかくようにして体勢を整え、全員が揃うのを待った。そして、ガイド役のお父さんが海の中に入って全員が揃った。お父さんは、拳から親指だけを突き立て、それを海面に向けて何回か上下させた。「潜行」の合図である。私たちは、シュノーケルを外してレギュレーターにくわえなおした。このときも、レギュレーター内には海水が入っているので、一度吐き出さなければならない。
着用しているベスト内の空気を少しずつ抜いてい行くと、身体は沈んで行った。すると20mくらい離れたところに大きな黒い影が確認できた。マンタである。「1本目で見れるなんて本当にラッキーだ!」と思わざるを得なかった。
ここヨナラ水道でも、仲之御神島の時と同じように海底にある岩場につかまってマンタが来るを待つわけだが、潮の流れはかなり弱く、しがみつく必要などはなかった。
私たちは岩場まで潜行したころには、先程見たマンタの影はもうなくなっていた。「いないかな〜」とキョロキョロしていると、今まで海面にキラキラと輝いていた太陽に雲がかかり辺りが暗くなった。先程までは雲ひとつない快晴であったので「天気が悪くなってきたのか?」と見上げてみると、マンタだったのである。私たちの頭上を悠々と泳いで消えていった。
再びキョロキョロしていと、ツアーメンバーの一人が私の肩を叩いてきた。振り向くと、少し離れたところを指さしている。目を凝らしてみると、2匹のマンタが並んで泳いでいた。きっとアベックだったのであろう。40分ほどマンタウェイを楽しみ、私たちは船に戻った。船上でタンクなどを外して身軽になると、誰からともなく拍手が起こったのである。
※YouTubeの張りつけ動画は本文とは直接的な関係はありません。
「バラス島」とは、西表島とその北に位置する鳩間島の間に浮かぶサンゴの殻からできている小さな島のこと。ダイビングやシュノーケリングのポイントになっている。私の思い違いでなければ、ヨナラ水道で1本目を潜った後に2本目としてこのポイントに移動している。
正直に言うと、どのようなポイントだったのかほとんど記憶にない。一つだけ記憶に残っているのが、マンタのようなものがこっちに向かってきたので、みんなに指を差して「マンタだ!マンタだ!」(水中だから聞こえない)と知らせてやったが、よくよく見るとビニール袋だということが分かった。どおりでみんな、首をかしげていたはずである。あと、バラス島自体が、周りのコバルトブルーの海に映えて白く輝いていたのも印象に凄く残っている。
備考 |
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