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トッピクス - 旅に出よう - 海外(その5)

 

 

 

・サクって、オレの名前のことなのか?

 

 

■ サクって、オレの名前のことなのか? ■

 タヒチ島のパペーテからランギロア環礁のアヴァトル島へは約1時間のフライトとなる。もしかしたら、私が何か勘違いをしているのかもしれないが、飛行場はシンプルそのもので、今まで旅行で何回となく飛行機を利用しているが、最も簡素な飛行場であった。滑走路と日よけ用の小屋が建っているだけであったように記憶している。

 私はタラップで飛行機を降り、自分の荷物を手にするとその小屋に向かった。そこには現地の人が、おそらく誰かを迎えにきているのであろう、何人か小屋の中に集まっていた。私は誰に話しかけることもなく「安宿を探しているのだけど」と告げると、その内の一人が少し離れたところにいる男性に声を掛けた。

 すると、その声を掛けられた男性は小屋の方に歩み寄ってきた。年齢的には60歳は超えていると思われる初老の男性であった。背も180p近くあるような感じで、四肢は細かったが、年齢的に仕方がないのであろうお腹はかなり出ていた。アロハのシャツに短パン、そしてサンダルという南国らしい格好であった。

 小屋から声を掛けた男性は、再びその小屋まで来た男性に「■○△※★」と話しかけた。すると、その男性は私の方に向かって、拙い英語で「何泊するんだ?」と聞いてきた。私は4泊したい旨を告げると、「1泊〜フランだけどもいいか?」とのことだったので、私はOKである旨を告げた。

(現地の通貨は「パシフィック・フラン(CFPフラン)」で、1泊いくらしたのかは覚えていないのだが、東南アジアの物価に比べたら決して安いものではない。日本とそれほど変わらないような記憶がある。)

 すると、「じゃあ、ついて来て!」の言葉に、私は小屋の中にいた人たちに挨拶をし彼の後について行った。30mも歩くと、「DATSUN」のプレートの貼られた小型のピックアップ式のトラックの荷台を指さして「荷物はここに入れて」と指示に、私は背負っていたバックパックを荷台に入れ、助手席に座った。

男性:「私は〜です。」

 私:「私は〜です。」

男性:「どこから来たのですか?」

 私:「日本からです。」

男性:「日本人ですか?あまり一人で来る日本人はいないですね〜。」

 私:「そうですか。一人の方が旅はしやすいし…」

男性:「そうですか…。」

 私:「はい…。」

 5分も走っただろうか、車はメインストリートから少し外れると、バンガロー式の小屋がビーチ沿いにいくつか並んでいるのが目に入ってきた。その中でも一番端にある建物は、「バンガロー」と呼ぶには立派過ぎ、他の小屋の3倍ほどの大きさがあり、一目でメインの建物であることが分かった。車はその大きな建物のところで停車した。

 男性は車から降りると、荷台のところにあった私の荷物を取ろうとしたので、「重いから私が持ちます」と言ったのだが「これくらいは大丈夫だ!」と私の荷物を手に取った。

 私達が小屋に入ると、中は閑散としていてだれもいなかった。男性が何やら大きな声を掛けると、2階から、やはり60歳は過ぎていると思われる女性が下りてきた。体形も、よく現地の女性に見られる典型的なポッチャリ型で、服装も現地の女性が好んで着るような花柄のゆったりとしたワンピースであった。一目で「奥さんだな!」ということが分かった。

 ご主人が「このお客さんは日本から来たサクだ。」と奥さんに紹介してくれたのだが、「サクって、オレの名前のことなのか?かなり違うのだけど…」と一瞬思い、勘違いしているのは明白であったが、敢えてそこを「いや、違います!私は〜です」と言う気にはなれなく、滞在中はずっと「サク」と呼ばれることとなった。奥さんが右手を差し出してきたので、「ボンジュール」言って軽く握手をした次第である。

 

備考