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トッピクス - 旅に出よう - 海外(その3)

 

 

 

・何か売るものはありますか?

 

 

■ 何か売るものはありますか? ■

 どこの国でも、街中を歩いていると声をかけられることがある。ただし、その頻度や内容は様々だ。この旅で、もっともよく声を掛けられたのはフィリピンで、断トツの1位である。「日本について知りたいんだ」「いい女がいるぞ」といくつかのパターンがあった。

 タイや、その他のマレー半島にあるマレーシア、シンガポールなどの国々では、声を掛けられなかったこともなかったが、ほとんど記憶に残っていない。

 そして、ここインドでも、特にニューデリーでは「何か売るものはありますか?」と、何回か声を掛けられた。一番最初は、道端に腰を下ろし通りを眺めていた時のことであった。私の横に、年齢的には30過ぎくらいのインド人が腰を下ろして英語で声を掛けてきた。

インド人:「こんにちは。日本人ですか?」

   私:「そうですよ」

インド人:「インドへは仕事で?」

   私:「いいえ、旅行です。そうですか、旅行ですか…」

インド人:「それで、何か売るものはありますか?」

   私:「売るもの?」

インド人:「そう、何でもいいです。もう使わなくなったもの」

   私:「使わなくなったものね…」

 私は、バンコクで購入したコンパクトタイプのカセットレコードプレーヤーがあるのを思い出した。それを背負っているデイパックから取り出して

   私:「これ、もう必要ないけど…」

インド人:「じゃあ、売ってください!」

 それをいくらで売ったかは全く覚えていないが、まあ、たいした額でなかったことは確かだと思う。数百円くらいだったのではないだろうか…。特にお金に困っていたわけではないが、もう使いそうもなかったので売った次第である。彼も自分で使うというよりは、またどこかに売るような感じであった。

 翌日、再び彼に出くわし、またまた「何か売るものはありますか?」ということになった。この時、何を彼に差し出したかは思い出せないのだが、「これはもう使わないけど」と何かを彼に渡している。

 すると、別のインド人が近づいてきて、何やら彼と話し始めた。少しずつ語気も強くなり、怒鳴り合いとなり、ついには殴り合いのケンカになってしまったのである。私は訳が分からずただ眺めているだけだったのだが、傍観していたインド人が「あなたはどこかへ行った方がいい」というので、その場を去った次第である。

 殴り合いのケンカになってしまった理由は分からないが、想像するに、私が最初のインド人に不要になったものを渡すのを見ていて「お前だけずるいじゃないか!」ということになったのだと思われる。数時間後、三度最初のインド人に遭遇してしまったのである。

   私:「おいおい、大丈夫かい?」

インド人:「大丈夫だよ」

   私:「何でケンカなんかになったの?」

インド人:「いや、たいした理由はないよ。迷惑かけたね」

   私:「別に、僕の方は大丈夫だけど…」

 放したがらなかったので、それ以上ケンカの理由を聞こうとは思わなかった。しかし、彼の頬が赤く腫れていて、とても痛々しそうであったのは今でもよく覚えている。

 

備考