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トッピクス - 旅に出よう - 海外(その3)

 

 

 

 

 

■ 宿 ■

 バラナシで宿泊した安宿は、前述したように長方形の大部屋で、そこに5,6名が布団を敷いて寝た。この宿のオーナーはシルクの織物の販売もしているようで、「ちょっと持ってくるから見てみろ」と言って宿泊客がいる大部屋にいろいろと持って来るのであった。

 当然、「見て、はいおしまい」というわけにはいかない。「これ、お土産にどうだ」と営業攻勢が始まる。最初に「買わないからね」と断ってはいるのだが、そんなのはお構いなしである。「これなんかきれいだろ。お母さんのお土産にぴったりだ!」とか、「こっちはちょっと派手目なので、彼女にプレゼントするのがいいぞ!」とそう簡単には諦めようとはしない。

 私は、こういう時には決まって言うセリフがある。「全ての日本人が金持ちなわけではない。オレみたいなベリーベリー貧乏な日本人もいるんだ」と…。すると、「どうだ、この織物を織っているところに案内してやるぞ。ここからそんなに遠くないけど、行くか?」と攻撃の仕方を変えてきた。

 「織っているところが見れるのであれば見てみたい」と思った。私は「いいのか?」と聞くと、「もちろんだよ。さあ、行こう!」と言うことになり、宿を出て彼の後に着いて行った。

 5分も歩いただろうか、彼が「このちょっと先だ!」と狭い路地に入っていくと、織る音が聞こえてきた。彼が「ここだよ」と言う方に視線をやると、そこは民家を織り場として使用しているようで、壁や窓などはなく、狭い路地から作業している人たちを見ることができた。

 大人に交じって、おそらく中学生くらいと思われる男の子も作業をしていた。何枚か写真を撮ると、近くにいた子供たちも集まってきた。「あまり長居をしても作業の邪魔になるのでは」と思い、連れて来てくれた宿のオーナーに「もう十分である」旨を告げると、私達は来た道を宿に戻った。

 宿に戻ると、オーナーは「いつでも欲しい時は声を掛けてくれ!」と言ってきたので、「OK」と返事をし、彼に織るところを見せてもらったお礼を言った。

 

 

■ ラッシー ■

 ラッシーとは飲むヨーグルトのことで、インドではごく庶民的な飲み物である。その他の庶民的な飲み物としては、チャイがある。全ての地方で同じような飲み方をするのかどうかは分からないが、私が訪れた地では、チャイと言えば、紅茶の葉を煮出し、それにミルクと砂糖を加えるいわゆる「ミルクティー」であった。これがまた美味である。

 さて、ラッシーだが、ここバラナシでも人気のある飲み物のようで、腰掛けるイスを設けているところもあるが、いわゆる立ち飲みをする「ラッシースタンド」のようなお店も多い。そして、通常ではないラッシーを出す店もある。

 「通常ではない」というのは、「ちょっとスペシャルな」ということで、そのラッシーを「バングラッシー」と呼んでいる。「バング」とは「大麻」のことである。つまり、「大麻入りのラッシー」ということになる。大麻を入れる量によって、ライト、ミディアム、ストロングの3種類がある。

 記憶にないのだが、おそらくその辺の情報も「地球の歩き方」には掲載されていたに違いない。もちろんそれは、「試してみては」というものではなく、「くれぐれも注意しなければならない」と言うものであるはずだ。

 現在もそうだが、私が訪れた1988年の当時も、インドでは大麻の販売や使用は違法のはずである。だが、普通の通りのラッシースタンドあたりで公然と売られているのも事実で、何も路地裏に入り人目につかないような店に行く必要はない。

 同じ部屋に泊まっていた若い日本人から「飲みに行きませんか?」と誘われたが、もちろん断った。彼は一人で行ったようで、帰ってきてしばらくすると、気持ちがハイになってきたのゲラゲラと笑いだす始末である。「現在はどうなっているのだろう?」とネットで調べてみると、今でも公然と販売しているよで、YouTubeなどには動画も投稿されている。

 また、ネットなどには「私も飲んだが、別に何でもなかった」などという文も時折見かけられ、かなり個人差があるようだが、もしかしたら「大麻入り」ではなく、「ただの葉っぱ入り」だった可能性もあり得る。ミネラルウォーターと称して水道水を販売していたり、まあ稀かとは思うが、工業用のアルコールを混入してウィスキーと称して販売し、それを飲んだ人たちが失明するという事件も過去に起きている。それがインドなのである。

 さて、バラナシの後は、バンコクに戻るために再びニューデリー向かっている。

 

備考