四方山話

        

韓国フィットネス紀行/四方山話



 


ソウルのフィットネスクラブ

 訪韓前に事前にネットで調べていたので、ソウルにもフィットネスクラブがいくつかあるのは分かっていた。まず、タイやマレーシアで通った「カリフォルニア・ワウ」で、ソウルの中心部に位置するミョンドン店を始めとして市内だけでも3店舗あり、施設も充実しているようである。
次に「ヒューレスト・フィットネス」が2店舗、そして「ソウルクラブ」と言う名前のフィットネスクラブが1店舗ほど検索で引っかかってきた。
最後の「ソウルクラブ」に関しては、屋外にプールの施設などを持ち富裕層向けのフィットネスクラブのようだ。つまり、私には無関係である。
まずは「カリフォルニア・ワウ」のミョンドン店に行ってみた。ここであれば宿のナムサンゲストハウスから徒歩で11、12分と言ったところである。
4階建てのビルがまるまるフィットネスクラブになっているが、それぞれのフロアはさほど広いとは言えない。どちらかというと、縦に細長いと言ったところである。1Fの受付に女性がいたので1日の利用料を聞くと「25,000ウォン」とのこと。日本円にして約3,378円で、日本のフィットネスクラブのビジターの利用料とかわらない。
「じゃあ、1週間では?」と聞くと、手元にあった電卓を叩いて「175,000」と出た数字を見せてくれた。単純に25,000に7を掛けた数字である。「じゃあ、2週間だとその倍ってこと?」と聞くと、首を縦に振っているが「マネージャーを呼びますから、ソファに座って待っていてください。」と言ってくれた。
すぐに30半ばくらいの男性のマネージャーが現れ、名刺を手渡された。彼に「17日間ほどソウルに滞在をするので、その間にフィットネスクラブで身体を動かしたいのだけれど・・・」と言うと
「17日間ですか。またソウルには戻ってくる予定はありますか?」
「いや、とりあえずその予定はないけど・・・。」
「そうですか。1日の利用料は25,000ウォンです。ですから17日間だと・・・。」
と手に持っていた電卓を叩いて425,000という数字を見せてくれた。単純に25,000に17をかけた数字である。
「結局、ディスカウントなしか?日本円で3,378円を毎日支払っていくのは辛いな・・・。」と思っていると
「でも、まあその半分の215,000ウォン、さらにディスカウントをして120,000ウォンでいいですよ!」
と言ってくれた。120,000ウォンというと日本円にして約16,216円で、一日の利用料は
約954円となり1,000円を切る。これなら大助かりだ。金額的には十分に納得できたので「中を見せてもらいたいのだけど」と言うと「分かりました。」ということで各フロアを案内してもらった。
ざっと案内してもらっただけなので、それぞれのフロアにマシンが何台くらいあるのかは把握できなかったが、バイクなどの有酸素系のマシン、プレート式の筋トレマシン、フリーウエイトなど一通りそろっていたが、スタジオはお粗末であった。
広さ的にも30名くらい入るか入らないかといったところで、おまけに中央の大きな柱が2つほど目に入ってきた。
一通り中を見学し1階のソファに再び案内されたので、私は彼にこう告げた。
「なかなかいいところですが、今日は現金を持ち合わせていないので入会の手続きは取れません。また後で来ますが、120,000ウォンというのは確かですね!」
「もちろんです。マネージャーの私が言うのですから・・・。」
金額をもう一度確認したが、念のためにもらった名刺にその金額を書くように頼んだ。すると彼は「25,000×17=425,000 D/C 120,000」と書き「D/Cというのはディスカウントのことです。」と説明してくれた。「最悪の場合はここでこの金額でやろう。」と思い、彼にお礼を言って外に出た。
そして、すぐにその足で同系列のアプグジョン店に向かった。ミョンドンからアプクジョン店までは、乗換えをしなければならないが、地下鉄で6つ目のアプクジョン駅で下車し、そこから徒歩で15分強かかる。この辺一体は高級住宅地として開発されたようで、駅からフィットネスクラブまでの道のりにはおしゃれなブティックやカフェ、バーなどが目に付く。
このアプクジョン店も5階建てのビル全体がフィットネスクラブとなっているが、1Fはフロントと入会等の手続きをするスペースとジムスタッフのオフィスがあり、それ以外のスペースにはスターバックスなどの飲食店が入っている。
ビルは大通りに面していて全体がガラス張りになっているので、中からも通行人の様子が良く分かるし、外からも中でランニングマシンなどで走っているのが良く分かる。
受付の女性に「利用料を聞きたいのだけど」と告げると「ちょっと待ってください。」と言って奥のオフィスに消えていったが、すぐに男性と共に戻ってきた。その男性と握手を交わし、ソファに腰を下ろした。
男性は「マネージャーのダニエルです。」と言って名刺を渡してくれた。年は30から33歳といったところ。ネクタイはしていなかったが、暑いのに黒いジャケットはしっかりと羽織り、その下には縦のストライプが入った少し派手目のシャツを着ていて、大きく胸元を開けていた。
しかし、なぜ「ダニエル」なんだろう?タイにも「ダニエル」という名前のインストラクターがいた。全員ではないのだろうが、本名とは別に英語のニックネームがあるようだ。スタジオの時間割を見ても「ケビン」「リサ」「ステファン」「ベティ」のように明らかに韓国人の名前とは異なるものがある。まあ、外国人からすればそのほうが覚えやすいことは覚えやすいが、日本で「インストラクターのキャサリンで〜す。」なんて言ったら間違いなく総好かんを食らうだろう。
話は少しそれてしまったが、さて利用料をたずねなければならないが、作戦を少し変更してみた。私は彼にこう告げたのである。
「今回は17日間の予定でソウルに来た。その間、フィットネスができるところを探している。今回の訪問は短期だが、来年戻ってきて少なくても1年間はソウルに住む予定だ。で、この17日間の利用料はどれくらいになるだろうか?」
「17日間ですか…?それで来年戻ってくるのは確かですか?」
「もちろんだ。」
「いつごろ戻ってきますか?」
「いつごろ?」という予想もしていない質問にちょっとオドオドしてしまったが、
「3月か4月くらいだと思う。」
「そうですか…。短期だと1日の利用料は25,000ウォンです。今回は17日間だから、25,000×17で425,000ウォンとなります。まあ多少は割引できますが、来年戻ってくることが分かっているのであれば、正式に入会の手続を取ってしまったらいいじゃないですか?そうすれば今回の分と来年1年間の利用料合わせて1年間分の会費で構いませんよ。つまり、今回の17日間の利用料がまるまるタダということになります。そうでないと、今回の利用料を捨てることになりますよ!」
「正式に入会の手続をする」?うっ、これも予期しない展開になってきた。「来年必ず戻ってくる」と言って、今回の利用料をなるべく安くしようとした作戦が裏目に出てしまったようである。そこで
「いや、いくら来年戻ってくることが分かっていても1年先の入会の手続を今回することはちょっとムリだよ!」
「どうしてですか?お金がもったいないですよ。」
「でもさ…、ちょっとな…、先ず利用してみないと、ここが自分に合っているかどうか分からないだろう?!」
「何を言っているのですか!ここはソウルで一番大きなフィットネスクラブなんですよ!ここが気に入らない人がいるわけがないじゃないですか。有名人だってたくさん来ています。見てください、うしろの写真を!」
と言って壁を指差した。A4くらいの大きさの写真に本人のサインがしてあり、それが壁一面にかけられていた。韓流スターに特に興味がない私でも「どこかで見たような顔だ」というものが何枚かあったし、その中の一人が「ペ・ヨンジュン」であることくらいは分かった。
また、実際に来たかどうかは定かでないが、「トム・クルーズ」などのハリウッドスターの写真も何枚か混ざっていた。(どんな有名人が来ようと、関係ないことなのだが…。)
「ソウルで一番大きいの?」
「そうです。ソウルで一番大きいです。私たちのフィットネスクラブの売りは何だか知っていますか?」
「いや、知らない。」
「それはスタジオのグループエクササイズ(GX)とパーソナルトレーニングです。」
「へえー。」
「そうです。GXの種類は豊富ですし、パーソナルトレーニングもそれぞれの目的に合わせてプログラムを組み立てています。ところで、失礼ですが、どこから来たのですか?」
「日本です。」
「何だ、日本人ですか?ボクの彼女も日本人です。名古屋の出身で、来年、結婚する予定なんです。」
「そうなんだ。おめでとう!」
「ありがとうございます。何だ、日本人だったら友達みたいなものじゃないですか?」
「友達ね…。とりあえず、今回は17日間だけ利用したいんだ。来年のことは、また来たときに考えるよ。」
向こうもあまり無理に勧めてもダメだとみたのか、「分かりました。」とうなずいてくれた。そこで、こう彼に言ってみた。
「実は、さっきミョンドン店を見学して来たところなんだ。」
「そうなんですか?どうでした?」
「悪くはないが、ちょっと狭いかな…。」
「そうでしょう。ここは全然違いますよ。ソウルで一番大きいのですから…」
「で、ミョンドン店では17日間で12万ウォンでいいと言ってくれたよ。」と私はミョンドン店のマネージャーからもらった名刺を見せた。
「12万ウォンね…。本当に来年戻ってくるんですね?」
「本当だよ。友達だろ!」
「しょうがないな。じゃ、来年戻ってきて入会してくれるということで、12万ウォンでいいですよ!」
「本当かい?助かるよ!」
「先ず、店内を案内しますよ。」
ということで、2階から4階まで案内してくれた。広い、十分な広さである。ミョンドン店の倍以上はある感じである。有酸素系のマシン、プレート式の筋トレマシン、フリーウエイトなど種類も豊富だ。
ただし、GX用のスタジオは、ここアプクジョン店にも1つしかなかった。そして、残念ながら、ここにも中央に大きな柱が2本ほどあった。それでも、マックスで60人くらいは入りそうな広さである。また、同じフロアにスピニング(自転車)の専用スタジオもあった。
あと、うれしいことには、シャワールームにはジャグジーが付いていた。特に疲れたときなどは、これがけっこう助かる。タイ、マレーシアでは一切見かけなかった。また、タイ、マレーシア同様、プールは付いていない。
「どうですか?なかなか良い設備でしょう!」と彼が言うので
「うん、そのようだ。で、17日間で12万ウォンでいいんだね!」ともう一度念を押すと
「いや、それには入会金が含まれていません。」
「何だ、何だ、入会金のことなど今まで一切言っていないじゃないか!」と突然出てきた「入会金」という言葉に驚き
「おいおい、17日間なのに入会金を取るの!?」
「冗談ですよ!12万ウォンでいいですよ。」
「驚かすなよ!」と安堵のため息と言ったところである。もうこの時点で「ここでいいや。」と決めていたので 
「じゃあ早速、入会の手続を取りたいのだけれど、カードで支払えるだろう?」と聞くと「OK」とのことだったので、首からぶら下げてTシャツの下に入れてある貴重品入れを出すと
「韓国ではそんなことする必要はありませんよ。」と彼はケラケラと笑った。いやいや「韓国では盗みはない」というわけではないだろう。「貴重品は慎重に管理するに越したことはない」と思いながらも現金やカード類は全て宿に置いてきたことに初めて気が付いてしまった。
「あら、いや参ったな!現金やカードは全て宿に置いてきてしまったよ。」
「それだったら、明日1時から出勤していますので手続に来てください。」という彼の提案に「うん」とうなずき、ミョンドン店と同じように、もらった名刺に「12万ウォン」という金額を書いてもらおうとしたら「特別な料金設定」なのでムリとのこと。
「心配しないでください。ボクの彼女も日本人なのですから…。」と言う彼の言葉を信じ、握手を交わし宿に向かった。
そして、翌日、デイパックにシューズやウエアなどを詰め込んで、入会の手続をするために再びアプクジョン店を訪れた。
数枚の韓国語の書類にサインをさせられたが、その都度ダニエルは「この書類は、一度支払った会費は返却できないという意味の書類です。」など簡単な説明をしてくれた。一通り手続も済んで、「写真を撮ります。」ということで受付のPCの上にあったボール型のカメラで写真を取られ「カードは明日渡しますから。じゃあ、頑張ってください!」という彼と握手を交わし4階のロッカールームに向かった。
(追記)
今回つくづく思ったのだが、ネットだけでその土地のフィットネスクラブを探すのはかなり限界を感じる。当然かもしれないが、やはり地元で人に聞くのが一番である。
訪韓前にネットで「ソウルのフィットネスクラブ」とか「ソウルのスポーツジム」とうのキーワードで検索してみたが、引っかかったのは「カリフォルニア・ワウ」「ヒューレスト・フィットネス」と「ソウルクラブ」の3つだけであった。
ただ、実際に街中を歩いていると「こんなところにもフィットネスクラブがあるのか…。」というケースが何回かあった。また、屋台で飲んでいてたときに、地元の人から「ソウルで一番大きなフィットネスクラブはヨクサン駅のすぐ隣にあるスタータワーというビルの地下にある。」という情報を得ていってみると、結局は「ヒューレスト・フィットネス」のことであったが、この店舗に関しては、私の調べ方が悪いのかもしれないが、「ヒューレスト・フィットネス」のホームページ上では確認ができなかった。
一応、中を見学させてもらった。英語名「ジュディ」という韓国人の女性が案内してくれたが、規模的にはカリフォルニア・ワウのアプクジョン店のほうが大きいと思われる。あと、雰囲気的には、照明なども明るく、全体的に落ち着いたもので「若者」というよりは少し上の年代をターゲットにしているようである。
ここでも「今回は短期だが、来年再び来る」と言って17日間の利用料をたずねたが、短期の特別な利用料の設定はなく、少なくても入会金と1か月分の会費を納めなくてはならないとのこと。あわせて312,000ウォン(約41,600円)。そして、来年戻ってきたら入会金分の150,000ウォン(約20,000円)は免除してくれるとのことだった。
もちろん、これではお話にならないのだが、最後のほうには「10日間のフリーデイパス」をあげるので自由に使ってよいと言ってくれた。つまり、10日間は無料で利用できるということである。
最初は「ラッキー」と思っていたが、結局は使用することはなかった。理由その@、GX用のスタジオがちょっと変わっていた。最初からスタジオとして作られたスペースではなく「広場を透明なパーテイションで囲った」ものであった。最初からそういう斬新なものにするつもりだったのか、それともあとから「やっぱりスタジオが必要だ!」とそのスペースを確保したのかは分からないが、このフィットネスクラブができてから1年6ヶ月ということなので、「斬新さ」を狙ったのかもしれない。
というのも、ボディビルダーなどのトレーニングジムであれば別だが、フィットネスクラブにGX用のスタジオがないというのは、昨今では、常識では考えられないからである。
理由そのA、宿から更に遠くなり、最初のミョンドンにあるナムサンゲストハウスからだと2回は地下鉄を乗り換えなくてはならなくなり、「面倒くさいや」といつものサボり癖がここでも出てしまった。タダだったのに…。

 



 

「カリフォルニア・ワウ」ミョンドン店。繁華街にあるため、すぐ前の道は人通りが絶えない



大通りに面した「カリフォルニア・ワウ」アプクジョン店。ソウルで一番大きいとのこと。

 



「ヒューレスト・フィットネス」で「ウエアとシューズだけ持ってくれば10日間は無料で利用できるわ。」ともらったフリーパス。


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