台湾フィットネス紀行/四方山話




10月29日(月)出発

 今回は成田15時30分発のキャセイパシフィック航空である。2時間前には空港に到着したかったので、余裕をもって10時少し過ぎに家を出たい。
朝、8時ちょっと過ぎに起床し、コーヒーの飲みながら新聞をページを繰って拾い読みするのだが、やけに体が火照る感じがする。「熱でもあるのかな?」と少し不安になってきたが、テレビのニュースで「もうすぐ11月になるというのにただ今の気温は24度です。」というアナウンスが流れてきた。「なんだ気温のせいか…。」とちょっと安心してみたりもする。
JRの東京駅に到着したのが11時ちょっと過ぎ、そこから成田エクスプレスで行こうと券売所まで足を運んでみたのだが、何と次の便は12時03分で1時間近くも待たないといけない。「11時19分の快速のほうが次のエクスプレスよりも15分近く早く着きます。」と言われホームまで降り、やってきた快速を見て「1時間半近くも立っていたくない!」と速攻で断念。再び券売所へ行き特急券を購入することになる。
  以前はよく上野から京成電鉄のスカイライナーを利用したが、上野まで行くには電車を乗り換えないといけないのでここのところ東京駅から成田エクスプレスを利用しているが、1時間近く待たなければならないのは勘弁してほしい。余裕を持って家を出たからよかったが…。
1時少し前には成田空港の第2ターミナルに着き、キャセイパシフィックの受付カウンターに向かうが、15時30分発が16時15分に変更になっている。
2時間前でなくてもチェックインできるということなので荷物を預け出国をする。レストランやみやげ物屋などがあるところを適当にぶらぶらしていると、小腹が空いてきた。目一杯食べて機内食が食べれなくなってしまうのももったいないので「何か軽いものを…。」とレストランのウインドウをのぞいているとホットドックを発見。その横には「飛行機の見えるレストラン」というプレートが置いてある。
ホットドックと例によって命の源である「発酵麦芽汁」を注文して、滑走路に面したカウンターに腰を下ろした。
目の前の「JAL」のロゴの入った飛行機を見ながら「パクパク、グイグイ、ウメー!」とやるのだが、ふと右のほうに目を移すと「これから離陸しまーす。」と滑走路の方に向かう飛行機に手を振っている人が3人ほどいるではなか。
「何だ?何だ?」とよく見ると着ているユニフォーム(作業着)の背には「JAL」のロゴが入っているし、見送っている飛行機もJALである。多分、飛行機を誘導した人たちが見送りをしているのであろう。
ふと「今まで私が利用していた飛行機もあんな風に見送ってもらっていたのかな?」とちょっと疑問に思ったが、「いやいやそれはあり得ないな!格安航空券しか購入していないし…。」と自分で否定してみたりもする。
きっとこれはJALだからである。業績不振で経営再建中のJALはお客様が気が付かないところで涙ぐましい努力をしているのである。
だいたい港で船を見送るのと違って、彼らが飛行機を見送っていることに気が付く人はほとんどいないのではないのであろうか。気が付くとしても窓際の座席の人しかわからないだろうし、しかも目線をかなり下に向けないと彼らの存在がわからないはずである。
それを承知で彼らは「JALで安全な旅を!」と見送っているのである。
JALの「経営立直し会議」で議長は集まった社員に向かって言う。
「いいか、みんな、これからは営業、客室乗務員だけではなく、直接お客様とは接点がない整備に従事しているものも知恵を出し合い、社員一丸となって会社の経営を立て直していかなくてはならない。そこでみんなの忌憚のない意見を聞きたい!」
「あの〜。」
「何だ?」
「はい、私は空港で機内への荷物の運搬や飛行機の誘導などに従事しているのですが…。」
「で?」
「はい、今とっさにひらめいて、たいしたアイデアではないのですが、どうでしょうか?飛行機を誘導したあとに手を振って「見送り」をするというのは…。」
「「見送り」ね…。」
他の社員からは
「「見送り」といっても、機内から気付く人なんて誰もいないのではないですか?それではあまり意味が…。」
議長は
「いや、確かに気が付く人は少ないかもしれないが、滑走路に向かうほんの少しの間でも自社の機なのだから、業務のほうに支障がなければ見送る価値はあるかもしれないな…。」 
「はい、業務的には特に支障があるとは思えません。」
「よし、早速、実行しようではないか!」
「はい!」
そう、上記のようなやり取りがあったに違いない。彼らが見送ったことに何人の乗客が気が付いたのかはわからないが、少なくてもこのJALとは全く関係のないオレがしっかりと見とどけたぞ!
「よし、次はJALを使おう。少しでも売り上げに協力してあげようではないか!ただし、余裕があったらではあるが…。」とバカなことを思い巡らしていると、右手のビールグラスはすっかり空になっていたので、ホットドックについていたポテトチップスを1枚も残すことなく胃袋に収め、レストランをあとにした。
私のキャセイパシフィックの機は、遅延となった時刻の16時15分には成田空港を離陸した。チケットを購入した時に座席指定ができたので、通路側の席にしてもらった。
飛行時間は3時間半くらいであるがチケットを購入した時に座席指定ができたので、通路側の席にしてもらった。窓側の席でずっと縮こまっているよりは、通路側でたまに立ち上がって背伸びでもできたほうがどれだけ楽か知れないので、最近ではもっぱら通路側にしか座らないようにしているが、これがみごとに「外れ」であった。
トイレのすぐ横の通路側であったので、私の脇を頻繁に乗客が行き来し、また斜め横でトイレが空くのを待っている人が常に視界に入っているような状態であった。
幸いなことに匂いは漂ってはこなかったが…。
その辺が気になりながらも、機内食を取ったり、映画を見たりしていると「まだ着かないのかな?」というようなこともなく「台北国際空港へ着陸のため高度を下げます。」というアナウンスが流れてきた。
そして、20分もしないうちに私の飛行機は台北の台湾桃園国際空港に到着し、特に問題もなく出国の手続きを済ませたのである。

 


 

「飛行機の見えるレストラン」にて。黄金色にキラキラ輝くグラスの中の液体がなんともまぶしいではないか。今回の旅の安全を祈って「カンパイ!」



「いってらっしゃい!JALで安全で楽しい旅を!」と見送るスタッフたち。気がつく人は少ないと思われるが、何とも涙ぐましい努力である。「よし、今度の旅は私もJALにするぞ!そうしたら窓際の席から手を振ってあげるからね。予算が許せば…。



今回利用したキャセイパシフィックの飛行機。台北の次は香港まで行くようである。もちろん成田が始発というわけでもないだろうから、アメリカ本土からきたのであろう。香港の次はどこへ行くのであろうか?その辺のところは全く分からないが、昨今の原油高で利益を上げていくには航空会社もなるべく無駄が出ないようにフライトさせているに違いない。ご苦労様である。


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