士林観光夜市
インストラクターのリンに「台北で一番有名な夜市はどこ?」と聞くと「士林観光夜市よ」ということであった。連日のようにスタジオでレッスンを受けていて少し疲れも出てきたので、気分転換にちょうど良いと思い行ってみることにした。
ガイドブックによると、この「士林観光夜市」は地下鉄の「劍潭駅(けんたんえき/ジエンタンえき)」から徒歩で5分ほどのところにあるようである。
幸いなことに、その「劍潭駅」は最寄りの雙連駅から3つ目の駅で、宿を出てから「劍潭駅」までは20分弱で着くことができた。
平日の夜であったが、地下鉄の改札口を出て地上に上がると、歩道には人の流れができていた。そしてその流れは、少し先のビルとビルに挟まれ左右の店舗から出る明かりで煌々と照らされていた道路に続いていたので、迷うことなくその人の流れの中に入って行った。
こういう人混みではスリに注意しなければならない。お金は少なくても2つに分けてズボンのポケットに入れる。間違っても財布に入れて後ろポケットにしまっておくようなことはしててはいけない。
どこへ行くにもデイパックを持ち歩き通常は背負っているのだが、こういう人混みでは特に貴重品が入っていなくても背中ではなく胸に回して抱きかかえることもある。用心するに越したことがない。
15分も歩くと地下鉄の改札口を上がったところから見えたビルとビルの間の左右の店舗の照明で明るく照らされた道路の入り口までやってきた。
ここからは人の流れは分散している。そのまま進むもの。左右の店舗に入っていくもの。また、屋台なども出ているので、足を止めて食べるものを注文している人もいる。流れが一つの方向でないだけになかなか前に進まない。
もちろん私の場合は、何か買いたいとか、何か食べたいという目的があるわけではなく一通りグルっと回れれば良いだけなのである。一応、ガイドブックは持ち歩いているが、いちいち「今、どの辺だろう?」などと確認するのも面倒くさくキョロキョロとはしながらも「前進あるのみ」と歩いて行くと、左右の商店もまばらになってきたので、横道に入ってみた。
3、4メートルほどの幅の道であったが、食べ物を扱う屋台がたくさん出ていて人気のあるものは列ができているほどである。日本の食べ物を扱う屋台もいくつかあり、「たこ焼き」を売っているものもあった。
ここも適当に歩いていると屋台もまばらになり淋しくなってきたので、来た道を戻り、再びメインストリートまでやってきた。来た道を駅の方に戻っていくと、途中にはマッサージ店が何店舗かあり、お店の前ではにぎやかに呼び込みをやっている。
「マッサージ、どうですか?安い、気持ちいい!」と声をかけられたので、「トレーニングの疲れも残っているしちょうどいいか!?」ということで入ってみることにした。
「足裏マッサージ30分+全身のマッサージ30分」の計60分のコースを選んだ。正確な料金が思い出せないのだが、日本の半分くらいだったような気がする。
担当してくれたのは、年齢的には50代と思われるたくましい女性で、力も強く「痛ててててー。おばちゃん、もっと優しくしてくれー!」と思わず声を出したくなることも幾度となくあったが、「くそっ、このくらいで弱音を吐いたら日本男児の名がすたる!」と、なるべく平然とした表情を装ったのである。痛い時は「痛い」と言った方がもっと気持ちよくマッサージを受けられるのは分かってはいるのだが…。
それでも足裏、全身(腰から背中にかけてが中心)と1時間もマッサージをしてもらうとそれなりに気持ち良くなり、「すくないけど」とわずかばかりのチップを渡して店を後にした。
チップを渡すなどというのは日本では当然考えられなく、物価が安い国でビンボー人が唯一リッチな気分に浸れる瞬間である。よって、私は海外でマッサージを受けた時は、多少下手でも、また愛想がなくてもなるべくチップを渡すようにしている。
私の場合、結局、それは相手への「お礼」というよりは「海外では、オレってちょっとリッチ?!」という気分に浸るため意味合いが強いが、相手にとっても悪いことではないので「よし」としよう。
まあ、そのようなことはどうでもよいが、「さて、宿に帰ってビールでも飲みながら映画でも見るか」と地下鉄の駅の方に向かうと、駅とは道を隔てた反対側に平屋建ての大きな建物が目に入ってきた。
建物の周りにもいろいろとお店が出ていて、中も賑やかそうだったので入ってみることにした。
建物の中は食べ物を扱ったお店がぎっしりと詰まっている。麺類や鉄板焼きをはじめ、小吃(シャオチー)という小皿料理を扱うお店、そしてスイーツを扱うお店など、ありとあらゆる食べ物を扱うお店があるようだ。
また、食べ物だけでなくちょっとしたゲームコーナーや、日本のお祭りの屋台のように金魚すくいならぬエビ釣りやカメ釣りなどもあり、子どもたちにとっても飽きることのないスポットになっている。
さほどお腹はすいてはいなかったが、鉄板の上で肉や海鮮物のイカ、海老、ホタテなどがジュージューと音をたてて焼かれ、その香ばしい匂いが鼻を刺激すると「せっかく来たのだから」という気持ちになりカウンターに腰を下ろすことにした。
それを見ていたおばちゃんが「いらっしゃーい」という感じで近づいて来てA4ほどの大きさのラミネートされたメニューを3枚ほど差し出してきた。よくよく見ると日本語、英語、そして中国語のメニューで、迷わず日本語のメニューを手に取り「どれどれ」と見ようとすると、そのおばちゃんはすかさず「セットはどう?お得よ!」と片言の日本語で勧めてきた。
そういうパターンになってしまうと「本当に得なの?」と疑うことなど一切できない純粋無垢な私がいるわけで、おばちゃんのたくましい指が指す「お得なセット」という欄に目をやると、「バラエティセット」というのがあり肉と海鮮物がセットされているようなので、それを注文することにした。
目の前の鉄板にもやしが乗せられると「ジュー」と音をたてて小躍りをしている。その横に角切りにされた肉、海老、イカなどが次々と置かれ、それぞれ微妙に異なる「ジュー」の音色を放っているのである。
私の前にはアルミホイールが置かれ、食べられそうになったものからその上に乗せられるので、タイミングを見計らってハシを入れる。
どれも美味。味も醤油ベースのようで、日本で食べる鉄板焼と違いを探すのが難しいほどである。
最初は「こんなに食べれるかな?」とも思ったが、ビールという潤滑油があったので小さなもやしの頭の部分も食べ残すことはなかった。
お勘定を済ませ夜市の建物を後にしたが、自然と脇腹をポンポンと2回たたき「いやー、食った!食った!」という言葉が出てきてしまう。
「さて、宿に帰ってビールでも飲みながら映画でも見るか。」と地下鉄の駅に向かうのであった。
士林夜市の人気のある屋台を紹介したホームページ
http://www.tabitabi-taipei.com/youyou/200304/shop/index.html
夜市でマッサージ店に入った。お店の中のイスの7、8割は埋まっていて、海外からの観光客も多いようであった。 |
あっ、おばちゃん、そこそこ、そこがたまらなく気持がいいよ!ん?ちょっと…。うっ、うっ、い、い、痛いって…。 |
日本でも、お祭りや温泉街で見られるような「輪投げ」や「射撃」などの屋台も出ている。ここ台湾でも、子どもたちはデジタル式のゲーム機器にどっぷりとつかっているだろうから、かえって彼らにとってはこのようなアナログ式のゲームは新鮮味があるのかもしれない。 |
夜市の建物の外には日本の縁日や温泉街で見られるような「輪投げ」や「鉄砲撃ち」なども見られる。その中で1箇所だけ人だかりできているテントがあったので覗いてみると、椅子に腰をかけ耳の中に炎のついたローソクを入れている人たちがいるではなか。テントの上から垂れ下がっている黄色の垂れ幕には「耳道、除濕器」とあり「耳鳴、流膿、失眠、失衡」などの症状が列記され、上部には赤い字で大きく「神乎奇跡」との文字が見受けられる。
個人的には特に気になる症状もなかったが、「減緩老化」という文字を発見。「アンチエイジングか…。」と一瞬ためらいはしたが、椅子に腰を下ろす勇気はなかった。 |
「亀釣り」というのはさすがに日本では見かけたことがない。中をのぞいてみると、日本の縁日などでも売られている「ミドリガメ」である。釣れたカメは持ち帰る人もいるようだが、希望する人にはその場でから揚げにしたり、スッポンの生血を飲むように、一匹から取れる血はごくわずかではあるが、小さなガラス製のグラスに入れて「精力をつけるぞ!」とおいしそうに飲んでいる男性も中には見受けられた。てなわけはなく全て鑑賞用です。 |