四方山話

      

台湾フィットネス紀行/四方山話




串焼きバー

 アレキサンダー・ヘルスクラブの入っている「Neo19」の隣には複数の映画館が入っているワーナービレッジがあり若者に人気のスポットとなっている。また、そこには映画館だけではなく、カジュアルな衣料品を扱うお店、洒落たカフェやレストランなども見受けられる。
ビルの中には1回だけ見学程度で入っただけだが、その周囲は何回も歩いている。そして、そのビルの一角に「串焼きバー」という飲み屋がある。
厨房はビルに入った形になっているが、飲食をするカウンターやテーブルはビルの周囲の歩道に沿って設けられている。
最初はさほどその存在に気にすることもなく「よくある日本料理店か…。」くらいに思っていた。トレーニングで汗を流し、宿に戻ってコンビニで買ったビールを「グイっ」とやるのも十分においしいのだが、4、5日も滞在し、ある程度の生活パターンもできてくると「やっぱジョッキ生だよな!」となってくる。
「トレーニング後、軽くどこかでのどを潤せないかな」と思ったときに「あの串焼きバーにでも行ってみるか」という思考の流れはごく自然なもので、脳の細胞がいたって健全な状態であることを表している。
ヘルスクラブの入っている「Neo19」のビルを出て徒歩で2、3分ほどであり、雨が少しくらい降っていても傘を必要としない距離。カウンターにはイスが8脚ほど並べてある。
そしてそのカウンターに座ると、すぐ後ろがビルを取り巻いている通路になっているので、買い物や映画を観終えた人たちが背中を通り過ぎる形になる。
その通路を挟んで4人がけのテーブルが7、8個、またカウンターと同じ側のビルの壁に面して2人がけのテーブルが3つほど置かれている。
私は、ためらうことなくカウンターの席に腰を下ろし目の前のメニューを「どれどれ」という感じで手に取った。
メニューは当然のごとく漢字で、日本人であればだいたいどのような料理なのかは理解できる。
まずは(ビール)である。ジョッキ生は日本で言う中ジョッキで1杯100元。日本円で約350円なので、決して安くはなくむしろ高い方である。場所柄仕方がないのかもしれない。
この生ビールというのがアサヒスーパードライだ。台湾でのアサヒスーパードライはとても有名で飲食店では良く見かけるし、コンビニでもビールが並んでいる棚には必ずといってよいほど置いてある。
目の前に出されたガンガンに冷えた生ビールのジョッキを右手に取り、口元に運びグイグイとのどに流し込む。トレーニングで大量の汗を出し、少し脱水状態になった身体の各細胞に栄養が行き渡るのが感じ取れると「オッー!」と出る声をとめることはできない。それを聞いたカウンターの男性は私を見て笑いながら声をかけてきた。
「おいしいかい?」
「うまい。ビールは最高だ!これほどおいしい飲み物は他にはない!」
「なるほど。ところでどこから来たの?」
「日本から。」
「日本ですか!?観光ですか?」
「まあそんな感じかな。すぐそこにあるアレキサンダー・ヘルスクラブで汗を流すために来たんだ。」
「そうなんだ。じゃあビールはおいしいはずだ。」
彼の名前はロビー、もちろんニックネームで、歳は32、33歳くらいといったところ。なかなか英語が堪能である。どうやら雰囲気的にこの店の店長のようだ。
「何か食べるものは?」というのでメニューの「串焼」のところに目をやると「若鶏」とあったので、注文してみることにした。
「このお店、日本式のお店みたいだけどオーナーは日本人なの?」
「いや、オーナーは台湾人だよ。日本式(日式)は人気があるんだよ!」
「そうなんだ。」
と会話を続けていると、従業員の一人がお皿の上に焼きおにぎりをのせて注文を入れたお客さんのところに運ぼうとしているのは発見。
「あれっ!焼きおにぎりがあるんだ?」
「何?ヤ・キ・オ・ニ・ギ・リ?」
日本語の「焼きおにぎり」では通用しないようで、「おにぎり」って英語で確か「ライス・ボール」だったような気がしたので
「ライス・ボールだよ。」
「ああ、ライス・ボールね。食べるかい?」
「うん、1つお願いするよ。」
「メンタイコ?シャケ?」
「メンタイコで頼む。」
「O.K.」
しばらくして目の前に「焼きおにぎり」が運ばれてきたのだが、なんとも芳ばしい匂いを放っているのである。割ってみると中身は注文した「メンタイコ」ではなく「シャケ」であったが、この際そんなことはどうでも良いこと。口の中にほお張ると脳細胞は半分マヒ状態。
「うまい!」これがなんとも美味しいのである。日本で食べるものと全く遜色ない。
そもそもこの日式の串焼きバーであるが、日本人のお客さんを目当てにして作られたものではない。タイやマレーシアでは「日本料理」を出すお店では地元の料理と比べるとやはり料金も高めだし、地元の人よりは日本人を客層として狙っているケースが多いが、台湾ではお客さんのほとんどは地元の人で、高級な日本料理店以外はすっかり地元の人たちの生活の中に受け入れられているような気がする。
この串焼きバーも例外ではなく、お客さんのほとんどは地元の人(話す言語から)のようで、たまに西欧人もテーブルに腰を下ろしているのを見かけたが、日本人の姿は見ることはなかった。高めの料金設定は場所柄のせいであろう。
でもちょっと首をかしげたくなるのが、カウンターの前の天井から大型の液晶のテレビがぶら下がっていて常にテレビ番組を流しているのだが、全て日本の番組なのである。
BSのようでチャンネルも多彩みたいだが、「この番組、何年前の?」というものもある。
例えばドリフターズの「8時だよ。全員集合!」もその一つ。いや、みんな若い、若い。長さん、カトちゃん、ケンちゃんなどみんな若いのである。20年近く前の番組なのではないだろうか。
かと思うと、テレビ東京系の「ワールド・ビジネス・サテテイト」のBS版が放送されていたりして、日本と同時に見れるような番組もある。
だだ、よく理解できないのが、別の日に全く同じプログラムをやっているのである。「8時だよ。全員集合!」も「あれ、これ2、3日前にもやっていたな。」というのもあるし、別のチャンネルでは近々ロードショーされるキムタクが出演している映画「ヒーロー」の予告編を繰り返し延々と流していたりとなんとも不思議である。
話は少しそれてしまった。タイや韓国でもそうであったが、1度通ってしまうと「ダメな私」化してしまい「もう常連になっちゃうから」となってしまう。ということで、この「串焼きバー」にも7日間くらいはトレーニングしたあとに通ってしまった。
店長のロビーは私の顔を見るたびに「いつもの?」と聞いてくるので、うなずくと速攻で目の前に生ジョッキが置かれ、数分後にはメンタイコ入りの焼きおにぎりがお皿の上で芳ばしい匂いを放っているのである。



日本で公開が始まったばかりの映画「HERO」の看板が大きく掲げられ、こちらでも近日中に公開されるようである。個人的には特に興味がないのであるが、「串焼きバー」にもポスターが貼られていたので、店長のボビーに「キムタクって人気があるの?」と聞くと、「だれ?」との返事。「そのポスターの男性だよ?キムタクっていうニックネームなんだよ。」「ああ、彼ね。テレビのドラマでは人気があるみたいだよ。」という答えが返ってきた。



アレキサンダー・ヘルスクラブが入っている「Neo 19」の隣にあるシネコンプレックス「ワーナービレッジ」。この反対側の角に「串焼きバー」がある。


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