四方山話

      

     

タイ・マレーシア フィットネス紀行/四方山話




「No more,オカマ」なのだ!

 「オカマ」と「ゲイ」の区別は、正しいかどうかは分からないが、自分なりにしているつもりである。オカマもゲイも「女性を愛せない」という点では共通しているが、オカマは「女性になって男性を愛したい」という願望があり、ゲイは「男性のまま男性を愛したい」という願望を持っている。
だから、オカマは化粧をして美しくなろうとするし、ゲイはムッチョだったりするわけである。
でも、ちょっと待てよ。そうすると「オスギ」と「ピーコ」はどうなるんだ?彼らはゲイではなくオカマだったはずだが、化粧も女装もしていない。「カバちゃん」は?「ピーター」は?「三輪明宏」は?となってくるとなんだかわけが分からなくなってきた。
まー、とにかく区別は彼らに任せよう。私が勝手にいろいろ考えて呼び方を考えても、彼らに失礼である。自分のことをオカマと呼んでいる場合はオカマで、ゲイと呼んでいる場合はゲイとするのが一番だ。
しかし、バンコクではよくオカマを見かける。ウエイターやウエイトレスとして働いていたり、ショーパブのダンサーだったり、普通にオフィスで働いていたりしている。化粧をしているのですぐに分かるが、女装までして、胸まで膨らんでいたりすると、一見分からないことも多いが、声で判断ができるものである。
でも、タイだけオカマの比率が多いということはあるのだろうか?タイは「性転換」の手術も盛んだったりするわけで、何年か前にネットで「性転換」という言葉で調べてみたことがあるが、タイの美容整形の病院のホームページに「性転換」の手術のページがあり、いくらかかるか金額までは全く覚えていないが、「before」「after」で写真が掲載されていたのは鮮明に覚えている。
その国におけるオカマやゲイの比率を表す統計的な数字などあるのだろうか?今までに聞いたことはないが、あったら面白そうだ。
アメリカなどはゲイが多そうだな。でも、もしそのような数字があり、公表されたりするとまずいことが起きるかもしれない。一極に集中する可能性が出てくる。
オカマの多いタイには世界中からオカマが集まり、ゲイが多いアメリカには世界中からゲイが集まってしまい、「オカマ王国」「ゲイ合衆国」というのができてしまう可能性も大いにあり得る。まずい、そのようなことはやはりまずい。この世の中、微妙なバランスの上に成り立っている。一部でバランスが崩れると少なからず全体に影響を与えるものである。そのような数字が仮にあったとしても、公表してはいけないのだ。
しかし、今まであまり深く考えたことはないのだが、彼らはそういう要素を持って生まれてきているんだろうな、きっと。遺伝的な要素が強いと思われるのだが、そうすると、代々オカマ一家、ゲイ一家ということになり子孫を残せないことになってしまうな。
やっぱり、後天的な要素が主なのか?例えば、オカマの場合は、たまたま小さいころに、お母さんの留守のすきに、お母さんの使っている化粧品などを使ったりして、鏡の前でいたずらに化粧をしてみたりするのだが、その行為がエスカレートして、化粧だけでは物足りず、女装などをしたりするうちに目覚めてしまうこともあるのかもしれない。
ゲイの場合は、中学生くらいに、運動系の部活などで共に汗を流し、試験前には机を並べて「この方程式は…」「この文を現在完了形にする場合は…」などと自分の苦手なところを教えてもらっているうちに、肌と肌が触れ合ったりして「ピッピッ」と電気などが走ってしまい、相手に好意を持ってしまったりする。
そうだ、後天的な要素が強いのだ!などと、どうでもいいことを考えたりするのである。
私は、ことオカマに関しては敏感なのだ!断っておくが、決して同類だからというわけではない。体内に高性能の「全方位型オカマレーダー」を備えていて、彼らが発する微弱な電波にもすぐに反応する。
バンコクでは、特に夜になると、Tシャツ、民芸品、時計、ナイフ、シルク製品、DVDの海賊版など、外国人の観光客を相手にした露店が歩道を埋め尽くし、人がすれ違って通れないくらいになる。
ある日、DVDを物色していたときであった。隣に女性がきたかと思う、私の高性能レーダーがすぐさま反応した。オカマである。じっとこっちを見ている。こういうときは、一瞬でも目と目を合わせてはいけない。私は気づかない振りをし、そのままDVDの物色を続けた。程なく彼女(?)はあきらめたのか、私の視界から消えた。
私は「ホッ」と胸をなでおろし、「今日は何にしようかな?」と再び、その日見るDVDを探した。すると、また現れたではないか。わざとらしくDVDなどを手にしてチラチラとこちらを見ている。「勘弁してほしいな〜。」などとも思いながら無視し続けると、再び視界から消えていった。
急いで見たいDVDを決めた。「SWAT」「Click」というアメリカの映画で、通常は欲しいDVDを告げると、別の場所から持ってくるシステムになっている。「5分待ってくれ。」と言われたので、首を縦に振って、歩道に腰かかけて待っていたのだが、例の彼女の電波を再びキャッチした。今度は5mくらい左の方から発信し、私を見ているのである。「しつこいな!」とも思いながらも、とにかく相手にしないのが一番である。
注文したDVDが来たので、200バーツを支払った。小心者の私は、よっぽど通りの反対側に渡ろうかとも思ったが、「いやいや、待てよ。こういうときは断固とした態度で対応するのが、日本人男子である。」と大和魂を前面に出し、ホテルへに向かった。
すると、例の彼女は、今度は60は越えていると思われる西欧人の男性と歩道の真ん中でヒソヒソと話をしている。
このときはビジネスが絡んでいたようなので、向こうも「見込み」がないと判断したら、速攻で別のターゲットを探さなければならない。それがプロである。いらぬ心配をしてしまった。
しかし、前回タイを訪問したときは恐ろしい思いをした。借りていたアパート(知っている人のツテで、現地の人用のアパートを1ヶ月7,000くらいで貸してもらった。)の近くのセブンイレブンで買い物をし、レジで精算していたときのことである。
「この前もここで見かけたわよ!」と後ろから声をかけられた。振り向くと、歳は20代半ばくらい、色白でスレンダー、髪の毛を長く伸ばし後ろで結んでいる男性が私のすぐ後ろに並んでいた。
「本当?」
「そうよ。私も買い物に来ていたもの。うそじゃないわ。」
そのセブンイレブンにはたびたび立ち寄っていたので、ありえる話である。「あちゃ、また飲みすぎて記憶をなくしてしまっていたのかな。」などと反省しながら
「そうなんだ。」
「私の名前は▲□※☆で、この近くのショーパブで働いているのよ。よかったら、遊びに来てよ!」との彼の言葉に、「そう言えば、近くに大きなオカマのショーパブがあったな。」と思い出し、まじまじと彼の顔を見た。
「色白だし、顔のラインも悪くない。化粧をすると結構美人になるかもな。」などと思いながら、「OK」などと適当に返事をし、買ったものの勘定を済ませ「バイバイ」と言って店を後にした。
そのセブンイレブンからアパートまでは徒歩で3分程度、その途中で食べ物を扱っている屋台がいくつかあった。そのうちの一つのラーメン屋の屋台に寄って、テイクアウトのラーメンを注文した。
程なく私のレーダーが反応したのである。視線はそちらには向けなかったが、左方向、約5mの地点から、先ほどの彼の電波が出ている。気がつかない振りをして注文したラーメンを手に取り、アパートに向かった。
すると、彼の足音がだんだんと近づいてくるではないか。当然、私の歩く早さもそれに合わせてだんだんと早くなっていった。とても後を振り向いて確認しようなどという余裕はなかった。先ずはアパートまで無事にたどり着くことが先決である。
かといって「ダッシュ」する勇気もなかった。なぜだろう?まさか「熊」にでも追いかけられているわけではないので、「ダッシュ」なんかできません。努めて「平静」を装いたかったのも事実。それでも、残り50mとなったときには、競歩状態であった。
私はズボンのポケットからチェーンの先につけたアパートの門の鍵を取り出し、慌てて扉を開け、施錠をした。すると、彼の姿は目の前にあったのである。
「何、何、いったい何なの!」
「何で逃げるの?」
「別に逃げているわけでは…、だから、何の用なの?」(逃げている以外の何物でもないのだが…。)
「だから…、その…、あの…」
「だから何なの?」
「だから、あなたと朝まで一緒にいたいの!」
うおおおおー、恐れていたことが起きてしまった。最も聞きたくない言葉であった。
「だめ、だめ、だめ、絶対だめだから!」
「なぜよ?」
「なぜよ?」って「一体、オレを何だと思っているのだろう?同類だとも思っているのか?冗談じゃない!あなたのレーダーは感度が悪すぎ。お前は男で、オレも男なのだ!電気でたとえると、お前はプラスで俺もプラス!プラスとプラスがくっつくとスパークして、火傷をしてしまうのだ!」とよっぽど言ってやろうかと思ったが、とにかく、ドアの門をはさんで2人が向かい合っているという状況から一刻も早く逃げ出したかった。
「とにかくダメなものはダメ!」と言って、2階にある自分の部屋へ通じる階段を上った。
彼はタイ語で「●∵※α□β☆▽!!!」と叫んでいたが、一切振り向くことはしなかった。部屋に入りドアを閉め、施錠の状態を3回確認し、手に持っていた荷物を床の上に置いた。そして、キシキシなるベッドに身体を横たえて、安堵のため息をついた。
「なんでこんなことになっちゃうのかな? 彼にアパートの場所は知られてしまったしな〜。」
彼がサイドビジネスとして私に声をかけたのか、純粋に気に入ってくれて声をかけてくれたのは定かではないが、そのことがあってからは、しばらくはセブンイレブンでの買物はできなかったし、アパートに向かう道では、私の「全方位型オカマレーダー」の感度を一番高い状態にしたのは言うまでもない。
「世界ウルルン」でカバちゃんがタイに行った番組を見た。彼(?)こそタイに永住するべきである。上記でも記したが、タイではオカマがオカマであることを隠すようなことをしていない。正々堂々と「私はオカマよ!」と主張し、市民権を獲得している。
「バンザイ、オカマ」であり「No more,オカマ」なのだ!


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