なぜか英語なのである。
マレーシアは様々な民族が共存する多民族国家である。もともとマレーシアに住んでいたマレー系(約65%)、中国系(約26%)、インド系(約8%)、その他(アラブ系、ヨーロッパ系など)が構成要素で、国語はマレー語だが、英語もよく通用する。
そして、スタジオのレッスンはどのようなクラスであろうと、全てインストラクターは英語を使っている。マレー語はチンプンカンプンなので、すべて分からないにしても英語を使ってもらえれば、私のような外国人は非常に助かるのだが、いま一つ納得ができない。国語がマレー語なのだから、マレー語が使われて当然と思われるのだが、なぜか英語である。
ついぞ、その辺のところを彼らに聞く機会はなかったが、もしかしたら母国語がマレー語であっても、多民族国家のため、民族が違うとマレー語で意思の疎通が難しいことがなきにしもあらずなのだろうか。
クアラルンプール最後の夜に、マッサージを受けようとブキッ・ビンタン通りまで出た。この通りを歩くと「マッサージ、マッサージ」の営業光線を浴びずに通ることはできない。中国系の60代くらいの男性に声をかけられた。
「フットマッサージ30分50リンギット(約1,750円)、オイルマッサージ35分、35リンギット(約1,225円)」のように書かれてた料金表を手に持ち、私に見せながら「フットマッサージはグッドだぞ!どうだ?」と勧めてくる。
もともとマッサージを受けるために来たのだし、通りから店内の様子が分かり、お客さんも結構入っていたので、安心して入ることができた。(まあ、この大通り沿いであれば、ぼられることはないと思うが、店内の様子が確認できなかったり、お客さんが一人もいなかったりすると、ちょっと不安なものである。)
足を洗い、空いているソファに案内され、「ちょっと待ってくれ!」と店の奥へ消えていったが、2,3分で一人の男性を連れて来て、「俺の息子だ。目が不自由なんだ!」と紹介された。
歳はだいたい25歳前後といったところであろう。1時間彼に私の両足を任せることになるのだが、マッサージは「普通かな?」といったところであった。
旅行者とマッサージ従業員との間で交わされるような、ごくありきたりな会話も持つ機会もあったので、彼に聞いてみた。
「家では何語を使うの?」
「両親が中国系なので、中国語。」
「でも、学校ではマレー語を使うんでしょう?」
「学校はChinese schoolに行ったので、中国語。日本にもChinese schoolの学校はあるの?」
「Koreanはあるけど、Chineseはないと思う。」
以上の会話の内容から、私の想像ではあるのだが、民族ごとに学校があって、それぞれの学校ではそれぞれの国の言葉が使われていたりしているのかもしれない。
だから、場合によっては、同じマレーシア人でありながらも民族が違うために、国語のマレー語では意思の疎通がうまくいかないこともあって、その穴を英語が埋めていたりしている可能性も大いにあり得る。
いずれにしても、海外旅行をするたびに、「やっぱり英語は話せないとな。もっと勉強しておけばよかった。」と反省させられるのである。