四方山話

     

     

韓国フィットネス紀行/四方山話




地下鉄にて

 ソウルの町は地下鉄が良く発達している。「網の目」とまではいかないが、主要な場所には不自由なく地下鉄を使っていくことができる。そして、貧乏者の私にはかなり助かるのだが、日本に比べると運賃がかなり安い。
まあ、普段、地下鉄を利用することは滅多にないので日本の地下鉄の運賃に関しては詳しくはないが、ソウルの場合、最低運賃が1,000ウォン(約133円)となっている。路線にもよるが、この最低運賃で8駅から10駅ほど移動できる。今回の旅行で、一番長い移動で23駅というのがあったが、それでも運賃は1,300ウォン(約173円)であった。
運転の本数も多いし、駅構内や車輌も日本と同じようなレベルで違和感なく利用することができる。
今回は、フィットネスクラブに通うのに毎日のように利用していたが、「ちょっと日本ではあり得ないかな?」ということもいくつかあった。


【構内販売】
ちょっとした駅では、改札口を出ると地下商店街になっているところもあるし、駅構内にも日本と同じように、いわゆる「キオスク」のような雑誌や飲食物を販売している店や、書店、衣類の専門の販売店などが設けられたところもある。
それとは別に駅構内や、改札口を出たところ、または地下鉄に通じる階段などに店を広げていることがよくある。衣類、靴、バッグ、菓子類など売っているものも多岐に渡る。
そして、これらのお店全てが正式に許可を得て出店しているようには到底思えない。
いつものように、フィットネスクラブに行くために駅のホームまで降りると、ホームの少し手前の柱のところで、70歳は過ぎていると思われる男性が腰を下ろして柄の短いほうきを売っていた。
もう見慣れた光景なので、私は特に気に留めるでもなく、ホームのベンチに座って電車を待っていた。また、そのベンチのすぐ横でも25歳くらいの青年がネクタイを売っている。
しばらくすると地下鉄の職員と思われる男性が3人やって来て、ホウキを売っている老人になにやら話しかけたかと思うと、商品のほうきを片付けさせてしまったのである。
この老人とネクタイを売っている青年とは4、5mくらいしか離れていないので、その職員たちが、青年の存在に気が付いていないわけがない。その青年も、職員と老人とのやり取りを見ていて、特に「ヤバイな!」と思っている風でもなく、商売を続けていた。
このことを考えると、一部正式に許可を出しているのかなとも思ってしまう。
また、あるとき電車を下りると青年が一人で「DVD」を売っているではないか。「何があるのかな?」と見ていると、別の青年が駆け足でやってきて「やばい、見回りが来るぞ!」とでも言ったのであろうか、もともと木の枠にタイトルごとに入れてあったDVDを木枠ごと重ねてカートに乗せて、どこかへ消えていってしまった。
その間、10秒といったところ。素早かった!


【カートを引いた男性が…】
いつものようにフィットネスクラブに行くために地下鉄に乗っていると、35歳くらいの男性がカートを引いて車内を移動してきた。ちょうど車輌の中央付近の左右のドアの間の少し広くなったところで立ち止まり「アンニョンハセヨ(今日は)!」と大きな声で左右の人たちに挨拶をしている。「何が始まるんだ?」と見ていると、左手でカートの中から何か白っぽいものを取り出して高々と上げている。大きさは手の平から少しはみ出すほどで手帳サイズといったところで厚みもそんなにはなさそうである。
すると、今度はカートから右手でキュウリを取り出しているではないか。で、その右手に持っているキュウリを左手に持っている白いもののほうに近づけてこすり付けている。すると、何枚かキュウリがスライスされたものが出てきて、掌の下の厚みのある部分で受け止めている。何と車内でスライサーの実演販売が突然始まったのである。
キュウリの次はジャガイモのスライスが始まった。そしてキュウリやジャガイモのスライスしたものを自分のおでこや腕にペタペタと貼り付けている。最初、「肌に良い」ということをアピールしているのかと思ったが、「肌にくっつくくらい薄くスライスできる」とのようだ。
一通り実演が終わると、カートの中からビニール袋に入った販売用のスライサーをいくつか手に取り、カートはそのままにして車内を歩き始めた。
「しかし、こんなところで買う人などいるのだろうか?」などと思っていると、何と1つ売れたではないか、そして「私にも一つちょうだい!」みたいな感じで座席に座っていたおばさんが声をかけている。
いくらなのかは分からなかったが、4、5個は売れたようだった。そしてその男性はまたカートを手に取り、次の車輌へと消えていった。
この旅行ではこのような車内販売を2回ほど見かけたが、もう一つは「簡易枕」の販売だった。
また、こんなこともあった。車内で30歳くらい男性が乗客にA4 くらいの大きさチラシを配っているのである。立っていた私は手渡されなかったが、前の座席に座っている女性が手に取っていたので、のぞいてみるとハングル文字だけの簡単なものであった。もちろんどのようなことが書いてあるのか全く分からないのだが、辺りを見回すと、読んでいる人はほとんどいない。「とりあえず配られたので手に取った」という感じである。
しかし、ご苦労なことにこのチラシを配った男性は、一通り配り終わると、最初に配った方から、チラシを回収し始めたのである。そして、一通り回収し終わると、次の車輌へ消えていった。
配ったチラシを回収するなんて、いやー、なかなかエコロジーでエコノミーだとは思うが、かなりエネルギーのいる作業である。変に関心をしてしまった。


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