四方山話

台湾フィットネス紀行/四方山話




烏来(ウーライ)

 台北の中心から南へ約30キロのところに位置する烏来(ウーライ)はひなびた小さな温泉の町である。私の宿の最寄り駅の雙連駅から地下鉄で「新店」まで行き(所要時間、約25分ほど)、そこからバスで30分ほどの山間にある。
「ちょっとのんびり温泉にでも…。」と思い出かけてみた。
 新店の駅の階段を下りるとインフォメーションセンターがあったので「烏来まで行きたいのだけど」と告げると、「バスはこのすぐ裏から出ています。」とのこと。軽くお礼を言い裏に回ってみると、バスの行き場ごとにいくつか停留所があるのだが、その中の1つだけがおじいちゃん、おばあちゃんで長い行列ができていたので一目で「烏来行き」ということが分かった。
おじいちゃん、おばあちゃんが「これから温泉じゃ。楽しみじゃのう。バスはまだかいのう?」とワイワイガヤガヤ言いながらバスを待っているのである。
私もその列の最後尾に並び、バスを待つことにした。
別方面のバスは頻繁にやってくるのだが、烏来行きのバスはなかなかやってこない。遠くから来るバスを確認すると、みんな首を長くしてそれがどこ行きのバスか確認するのだが、目的のバスでないと分かると「なんじゃ、また違うのう!」とその度にため息をつく。
20分近くも待ったであろうか、「おうおうやっと来た!」という感じで歓声があがったので烏来行きのバスが来たということが分かった。
ガイドブックには「新店から烏来まで37元」とあったので手元に100元札を用意しておいた。バスに乗り込み運転手に「烏来まで」と告げると「40元」とのことだったので手に持った100元札を差し出すと首を横に振っているではないか。
どうやらおつりがないようである。仕方がないので小銭入れの中を見ると50元硬貨があったのでそれを料金箱に入れると「早く中に入れ!」というジェスチャーで、お釣りはなかったのである。
10元くらい日本円にしたら約35円くらいなのでたいした額ではないのだが、「もし小銭がなく100元札を支払ったら、おつりの60元はもらえなかったのか?」などと思うと、何か引っかかったような感じがしてならなかった。
このバスは台北の市内のほうからやってくるバスで始発のバスではなかったので、乗り込んだ時点で座席はすべて埋まり、つり革につかまっている人もかなりいた。
当然のことながら、私よりも先に新店から乗り込んだおじいちゃん、おばあちゃんはだれも席をゲットすることができず、あきらめてつり革につかまる人がほとんどであったが、中には「どこらっしょ!」という感じで乗降口の段差に「ここは私の席!」と腰を下ろすばっちゃんもいた。
バスは5分も走ると街中を抜け、大きな川を右手に見下ろしながら谷あいのコーナーの続く道を走り、少しずつ標高を上げていっているということが分かった。
バスの運転手は「いつものことさ」という感じで結構なスピードでコーナーに入って行くが、その度に車体は右へ左へと大きく揺れ、例のおじいちゃん、おばあちゃんたちは「おっとっと!」という感じで手すりにしがみついている。
また、慣れないコーナーに無理してスピードを上げて入って行く車もあるとみえて、途中で2台ほど事故を起こしている車もあった。
このバスの終点は烏来であるが、その烏来に着く前に大き目の温泉宿がいくつかあり、途中で下車する人も何人かいたが、ほとんどの人は終点の烏来で下車をした。
 30分も乗ったであろうか、バスが終点の烏来に着くと例のおじいちゃん、おばあちゃんは「さあ、温泉じゃ!温泉じゃ!」と足取りも軽くどこかに消えて行ってしまった。
山間の川を挟んで左右に温泉宿が立ち並んでいるが、温泉街自体はさほど大きなものではなく、端から端まで歩いたわけではないが、15分も歩けば一通り歩いて回れるほどの大きさである。
また、群馬の草津温泉のように「湯煙が出ている」などという情緒は一切ない。これは想像の域を出ないのであるが、源泉は少し離れたところにあり、そこからお湯を引いているような気がしてならない。
というのも、川の岸から岸にかけて各温泉宿に無数のパイプが渡されているのであるが、どうもその中をお湯が通っているような気がしてならないのである。
直径3pほどの塩化ビニールでできたようなパイプなのであるが、仮に温泉を通すパイプでなければ水ということになるが、水にしては細すぎるような気がする。温泉にしても細すぎるか…。
ただ、あまり太くしたのでは到底岸から岸まで渡すのは無理であろうし、川の中を通してということになるが、結構流れが急なのでそれもなかなか難しいような気がする。
また今日も雨が降ってきた。傘をさすほどではないが、毎日、雨、雨、雨。体調が今ひとつ優れないということもあり、結局は街中を一回りして昼食を取っただけで終わってしまった。



「烏来」行きのバスがやっと来た。「さあ、これから温泉でゆっくりするのじゃ!」とおじいちゃん、おばあちゃんはそそくさとバスに乗り込んでいった。



「南勢渓」という川の両岸に温泉宿が立ち並んでいる。岸から岸への無数のパイプが渡されているが、一体何のためだろうか?
川は水量も多く、流れもそこそこあり「遊泳禁止」の立て看板があるが、川岸にある無料の露天風呂で火照った体を泳いで冷ましている人がいた。



大型の温泉ホテルというのはないが、中心部は飲食店、お土産物屋、そして温泉宿が肩を並べるように立ち並んでいる。



川岸にある無料の露天風呂でくつろいでいる人たち。年配の人が多い。日本とは違って、水着着用となる。



小さな食堂で取った昼食。右は竹筒飯(ヂゥートゥンファン)といい、もち米を竹筒に詰めて蒸したもので、中にはわずかであったが野菜などが入っていた。竹の香りが少し鼻をついたが、口に入れると特に問題はないが、好き嫌いは分かれるかもしれない。左は何の野菜だか忘れたが、店の前に何種類か野菜が並べられていて、好みのものを炒めてもらうのだが「これがおいしい。」と勧められるものを「じゃあ、それ」と注文したものだが、おいしく食することができた。


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