そこのオバちゃん、あなたは明らかにレッドカードである!
プーケットには一番大きなパトンビーチを始め、ナイハンビーチ、カマラビーチなどいくつかのビーチがある。今回、カタビーチを選んだのには特に理由があったわけではない。どこのビーチでも良かったのだが、一番大きなパトンビーチだけは避けて、のんびりとしたいなという思いはあった。
たまたま、インターネットを通じて予約できたホテルがカタビーチだったというのが本当のところだ。
さて、このカタビーチだが、観光客の95%は西欧人ではないかと思うほど、西欧人が多い。右を見ても西欧人、左を見ても西欧人状態で、たまに東洋人を見かけたりするが、中国語や韓国語を話していて、ほとんど日本人の姿を目にすることはなかった。
バンコクでは、そのようなことはあり得ない。もちろん西欧人も多いが、日本人も多く、韓国語や中国語を話している人ともたくさんすれ違う。
真偽のほどは定かではないが、ガイドブックかネットのホームページに、「バンコクにいる人の10分の1は外国人」という説明があったのを読んだ記憶があるが、うなずける話ではある。
そうなると、必然的に、日本人街とか韓国人街、アラブ人街などというものが出現し、そのような場所では日本語や韓国語、そしてアラビア語の看板などが林立し、タイにいながら他の国の文化などを感じたりできる。
アラブ人街にいくと、カフェで水パイプをプカプカやっていたり、全身黒装束の女性などがいたりする。韓国人街は焼肉かな?日本人街は何だろう?日本料理?居酒屋?日本食を扱ったスーパー?
よく分からんが、とにかくいろいろあるのだ。話が少しそれてしまったので元に戻そう。カタビーチには西欧人が多いと書いてきたが、私の感じでは、その西洋人の7割以上は60歳を優に過ぎていると思われる。つまり、高齢者が非常に多いのである。
足裏マッサージをしてくれたオバちゃんに「プーケットにはどれくらいいるの?」と聞かれたときに「5日間」と答えると、オバちゃんは「何でそんなに短いんだ!ファラン(西洋人)は2週間から3週間くらいはいるよ。」と言われたが、それもうなずける。
リタイアして悠々自適な生活をしている西洋人が、ここプーケットである程度まとまったバカンスを楽しんでいるのであろう。
「でもこの時期(1月終わり)にこうやって旅行できる日本人は少なく、ヤクザな私くらいなもんだよ!」と説明してあげようかと思ったが、止めた。
さて、カタビーチで見かけた西洋人たちであるが、みんな日光浴が大好きなようだ。ビーチ沿いに用意されているレンタルベンチ(1日100バーツ)に寝転がって、好んで身体を焼いている。
その辺が、ちょっと日本人と違う。日本人の場合、ある程度の年齢を過ぎると、特に女性の場合は、なるべく日焼けをしないようにするのではないだろうか。
ところが、彼らは「そんなに焼いてしまって後処理がどうするの?皮膚がん心配じゃないの?」と思いたくなるほど肌を焼く。だから、年配の人でも日焼けで顔の皮などがむけていたりする人もちらほらと見かけたりする。
考えるに、きっとバカンスをしてきたんだという証拠を残したいのだろう。帰国して
「あら、ナターシャ、しばらく見なかったけど、どこか行っていたの?そんなにいい色をして。」
などと近所の人から声をかけられて
「ちょっと、タイのプーケットに3週間ほど行っていたのよ!ビーチもきれいでよかったわよ。でも、ちょっと焼きすぎちゃったかしら?」
などという会話をしているに違いない。バカンスを楽しんできたという証拠を残すためにも、肌は小麦色にして帰らなければならないのだ、きっと。
さて、ビーチではちらほらとトップレスの女性も見かけたりする。今回はそういう機会はなかったが、トップレスの女性と会話をするときは細心の注意を払わなければいけない。
前に、フィリピンのボラボラ島のビーチでトップレスのイタリア人女性と話す機会があった。彼女は、ボーイフレンドとボラボラ島を訪れていたのであるが、たまたま島までの船が同じであったので、私はボーイフレンドの顔も知っているし、船の上で会話もしている。
ビーチを歩いているときのこと、「ハーイ!」声をかけてくるので、そちらのほうを向くと、この女性が波打ち際で戯れていたのである。トップレスで。
「あれ、一人?彼はどうしたの?」
と聞くと、
「気分が良くないみたいで、ホテルで休んでいるわ。」
などと会話をしたのであるが、トップレスであるが故、相手の目をじっと見て話さなければならない。これが結構疲れるのである。相手の目を見ながら話すのは、小心者の私には、非常に苦手だ。
たまに左右に視線をそらしたりするが、視線をそらしたまま会話をするのも失礼である。かといって、ちょっとでも下に視線を向けようものなら、一気に胸まで下りてしまうことは確実。
もしそのようなことになって、視線が胸に釘付けになってしまって戻らなくなってしまったら最悪である。
「なに見てるのよ!このスケベ日本人!」などと平手が飛んでくるかもしれない。「日本人の男性はみなスケベである。」という印象を与えかねない。個人的にはイタリア人男性ほどスケベだとは思っていないのであるが、日伊友好関係にヒビが入る可能性も出てくる。かつては同盟を結んだ国でもあるので、決してそんなことがあってはならない。
しかし、そのときは、努力のかいあって、何とか視線を下に落とすこともなく会話も適当に切り上げ「See you.」と、彼女と別れたのであった。
またまたそれてしまった話を戻すが、ビーチのレンタルベンチの上に横になっている人の中には、当然、年配の人もたくさんいる。この辺も日本人とかなり感覚が違うと思われるが、女性はほとんどがビキニである。中には大変失礼ではあるが、「水着じゃないほうが…。」という女性も多い。お尻のお肉が水着からはみ出して「ブヨンブヨン」している。
「なんでそんなになっちゃったの?どうしてそこまで放っておいたの?」と言いたいくらいである。「ちりも積もれば山となる。」ということわざが適当かどうかは分からないが、わずかなカロリーオーバーも長年蓄積されて「ブヨンブヨンお肉」になってしまったのであろう。まるで鍾乳洞の鍾乳石が形成されるように…。
で、そのような女性の中にも、非常に理解しがたく、どのような思考回路をしているのかさっぱり分からないが、トップレスの人がいたりする。
きっと「若いころと比べるとちょっとお肉もついてきちゃったけど、昔は肌に張りもあったし、こうやってトップレスになって、よくビーチで日光浴をしたものだわ。懐かしいわ。」と、若い頃を思い出しているに違いない。
また、すぐ横には、ご主人らしき人がやはりベンチで日光浴をしていて「昔とちっとも変わっていないよ!I love you.」などと言っているに決まっているのだ。
そのような光景を見ていると、「なんで、旦那は止めないのだ?!」と怒りみたいなものがこみ上げてきたりする。
このまま、放置しておくわけにはいかない。
「ちょっと、ちょっと、そこのオバちゃん!トップレスになってはまずいって!自分の年を考えてみてよ。優に60は超えているでしょ!そのお尻、スキーのモーグルをする斜面のごとく、ボコボコ。胸にいたってはなんて表現したらよいか分かりません!」と私は首からさげていたホイッスルを「ピッ、ビッ、ピー」と吹きながら、胸ポケットよりレッドカードを右手に取り、彼女の元へ駆け寄るのであった。
晴れたカタビーチにはブルーのパラソルの花が咲き乱れる。お花の下で身体を横たえるのは、もちろんタダではない。 |
ビーチの先がカタビーチの南端になり。私が毎日のように利用していたレストランもそこにある。 |
カタビーチのレンタルのリクライニングベンチにて。レンタル料は100バーツで、多分好きなだけいてもよいのだと思う。足の前にあるのは貝などでできたアクセサリーで、オジちゃんの営業光線を浴びていたところ。 |